愛媛大学の研究が示した“非認知能力”のすごい力
「学力を上げるには、とにかく勉強時間を増やせばいい」
一昔前はそう考えられることが多かったですよね。
でも最近の教育研究では、「子どもの幸せ」や「自己肯定感」「人とのつながり」が、学力にも深く関係していることがわかってきています。
今回紹介するのは、2026年に愛媛大学の研究チームが発表した大規模研究。
『A 市全小中学校の児童生徒を対象とした主観的幸福感および学力に関する要素の抽出と傾向分析』
なんと、A市の全小中学校の子ども約8,000人を対象に、
- 主観的幸福感(自分は幸せだと思える感覚)
- 学力
- 非認知能力
- 自己肯定感
- 健康状態
- 人間関係
- 学習時間
これらがどうつながっているのかを分析しています。
そして見えてきたのは、
「幸せ」と「学力」は対立するものではなく、同じ土台から育つ
という、とても重要な結果でした。
そもそも「非認知能力」って何?
近年、教育界だけではなく保育の世界でも注目されている言葉です。
(私が在籍していた法人でも、ことあるごとに「非認知能力」と「子ども主体の保育」という時期がありました。)
テストの点数では測れない力、と言えばイメージしやすいかもしれません。
例えば…
- 粘り強く取り組む力
- 好奇心
- 失敗しても立ち直る力(レジリエンス)
- 協力する力
- 自分で学び方を考える力
など。
研究では、この非認知能力が「子どもの幸せ」と「学力」の両方を支える“土台”になっていることが示されました。
この研究、規模がかなり大きい
対象はA市の全小中学校。
3年間にわたり、
- 小学生:約4,600人
- 中学生:約3,200人
合計約7,900人分のデータを分析しています。
かなり本格的な研究です。
しかも、
- 幸福感アンケート
- 学力調査
- 家庭環境
- 学習環境
まで組み合わせて分析しています。
「幸せな子ほど学力が高い」ではなく…
ここ、かなり大事です。
研究では、
「幸福感が高いから学力が高い」
と単純に結論づけていません。
そうではなく、
非認知能力
↓
自己肯定感・健康・人間関係・学習時間
↓
幸福感と学力
という“構造”が見えてきたんです。
つまり、
- 自分に価値を感じられる
- 人との関係が安心できる
- 心身が健康
- 学び続けられる
こうしたことが積み重なって、
- 「幸せ」
- 「学力」
両方につながっていく。
そんなイメージですね。
面白かったポイント①
「自己肯定感」が幸福感にかなり強く関係していた
研究では、
- 自分には価値がある
- 誰かの役に立っている
と感じられる子ほど、幸福感が高い傾向がありました。
これは保育や教育の現場感覚ともかなり一致しますよね。
「できた!」よりも、
- 認められた
- 必要とされた
- 安心できた
の積み重ねが、子どもの土台になる。
テストでは測れないけど、実はかなり重要な部分です。
面白かったポイント②
「人とのつながり」が幸福感を支えていた
研究では、
- 家族
- 友達
- 先生
- 地域の人
との信頼関係も、幸福感と強く関係していました。
特に小学生では、
「信頼関係 → 幸福感」
の影響が中学生より強かったそうです。
小学生って、やっぱり「安心できる人」の存在が大きいんですよね。
逆に中学生になると、
- 自分で考える力
- 自律性
- 学習習慣
などの影響が強くなっていく。
発達段階の違いが見えていて面白いです。
面白かったポイント③
「落ち着いて勉強できる場所」がかなり重要
研究では、
家に落ち着いて学習できる場所がある子
の方が、
「非認知能力 → 学力」
のつながりが強くなっていました。
つまり、
「やる気がある子」でも、
- 騒がしい
- 集中できない
- 学習空間がない
となると、力を発揮しづらい可能性がある。
これはかなり現実的な話です。
努力だけでは埋められない“環境差”がある。
教育を考える上で、とても重要な視点だと思います。
保護者支援の結果は少し意外
研究では、
- 保護者が相談に乗ってくれる
- 気持ちを尊重してくれる
群と、
- 放任
- 強い押しつけ
- 無関心
などの群を比較しています。
すると意外にも、
構造そのものには大きな差が出ませんでした。
もちろん、
「保護者支援が不要」
という意味ではありません。
ただ、
子どもの幸福感や学力は、家庭だけで決まるわけではない
ということかもしれません。
学校や友達、地域との関係も含めて、子どもは育っている。
そんなメッセージにも感じます。
保育・教育現場への示唆
この研究が面白いのは、
「学力」か「幸福感」か
という二択ではないこと。
むしろ、
- 非認知能力
- 安心できる関係
- 自己肯定感
- 健康
を育てることが、
結果として学力にもつながっていく可能性を示しています。
つまり、
- 子どもの気持ちを受け止める
- 安心できるクラスをつくる
- 「できない」を責めすぎない
- 人とのつながりを支える
こうした実践は、
「優しいだけの教育」ではなく、
学びの土台づくりでもあるわけです。
ただし、この研究にも限界はある
研究者たちもきちんと書いています。
今回の研究は、
- 愛媛県の1地域
- 横断分析(ある時点の比較)
なので、
「これをやれば必ず学力が上がる!」
と断定できるわけではありません。
でも、
「子どもの幸せ」と「学力」を対立させず、同時に考える視点
を示したことには大きな意味があります。
まとめ
今回の研究を一言でまとめるなら、
子どもの“心の土台”は、学力ともつながっている
ということ。
そして、
- 自己肯定感
- 安心できる人間関係
- 健康
- 学び続ける力
は、全部バラバラではなく、つながっている。
教育って、「点数だけ」でも「気持ちだけ」でもないんですよね。
両方を育てるために、
子どもが安心して、
「自分は大丈夫」と思える環境をどう作るか。
それが、これからの教育や保育でますます重要になっていくのかもしれません。


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