「体を動かさない子どもたち」に、いま大人ができること

論文

まとめ

  • 令和7年度の全国調査では、1週間の運動時間が420分未満の小学生が男子で約5割、女子で約7割にのぼる
  • スクリーンタイムが1日2時間以上の小学生も男子約6割、女子約6割と多い
  • 子どもの身体活動は体力・心血管代謝機能・骨の健康・認知機能・メンタルヘルスなど幅広い効果があると分かっている
  • 厚生労働省が2024年に改訂した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」で、初めて「子ども」を対象にしたガイドが示された
  • 目安は「中強度以上の身体活動を1日60分以上」「高強度の運動や筋骨を強化する活動を週3日以上」
  • 子どもの頃の運動習慣は大人になってからの健康にも影響するため、家庭・学校・地域のすべてで取り組むことが大切

こんにちは。元保育園の運営担当として、これまでたくさんの子どもたちの成長を見守ってきました。今日は、早稲田大学の石井香織先生が書かれた巻頭言をもとに、「子どもの身体活動」について考えてみたいと思います。

保育園にいた頃、外遊びが大好きな子もいれば、室内でじっとしているのが好きな子もいて、それぞれの個性だと思っていました。でも実際には、今の子どもたちを取り巻く環境そのものが、体を動かしにくい方向に変わってきているのかもしれません。

「暑いから」「時間がないから」「面倒だから」

記事の冒頭に出てくるのが、今の子どもたちが体を動かさない理由です。暑すぎて外で遊びたくない、時間がない、面倒だから。どれも、大人にも心当たりがある言い訳ではないでしょうか。実際、令和7年度に行われた全国体力・運動能力、運動習慣等調査では、1週間の総運動時間が420分に満たない小学生が、男子で約52%、女子では約74%にものぼるそうです。さらに、テレビやスマートフォン、ゲーム機などの画面を見ている時間が1日2時間を超える子どもも、男子で約63%、女子で約57%と、決して少なくありません。

保育園の現場では、外遊びの時間をきちんと確保していましたが、小学校に上がってから、あるいは家庭に戻ったときに、こうした習慣がどう変わっていくのかを考えると、少し心配になる数字です。

「動く」ことが子どもにもたらすもの

身体活動というと、つい「体力づくり」のイメージが先に立ちますが、記事によれば、その効果はもっと幅広いものです。全身の持久力や筋力はもちろん、血圧や血糖値、コレステロールといった心血管代謝の機能、骨の健康、そして認知機能やメンタルヘルスにまで良い影響があるとされています。もちろん、肥満の改善にもつながります。

つまり、体を動かすことは「運動能力を伸ばす」ためだけでなく、子どもの心と体の土台をつくる、とても大切な営みだということです。これは保育の現場で感じていた実感とも重なります。走り回って汗をかいた後の子どもたちは、表情も食欲も、その日の眠りの深さも違っていました。

国が示した「子ども向け」のガイド

もうひとつ、記事の中で印象的だったのが、厚生労働省が2024年に改訂した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の話です。これまでの「子育て支援」という大人目線の枠組みではなく、「子ども」そのものを対象にしたガイドが示されたことは、画期的な出来事だと筆者は述べています。

このガイドが示す目安は、次の2つです。

  • 中強度以上(息が弾む程度)の身体活動を1日60分以上行うこと
  • 高強度の有酸素運動や、筋肉・骨を強くするような運動を週3日以上行うこと

ここでいう身体活動には、テニスやサッカーのようなスポーツ、体育の授業やスポーツクラブでの「運動」だけでなく、通学や家のお手伝いといった日常の「生活活動」も含まれます。特別な運動の時間を作らなくても、日々の暮らしの中の動きも立派な身体活動としてカウントされるというのは、忙しい家庭にとって少し気持ちが軽くなる考え方かもしれません。あわせて、座りっぱなしの時間、特にスクリーンタイムを減らすことも推奨されています。

子ども時代の習慣は、大人になっても続いていく

記事では、身体活動や座って過ごす時間の習慣、そしてその健康への影響が、将来まで持ち越されることが指摘されています。つまり、子どものうちに体を動かす習慣を身につけることは、その子が大人になったあとの健康にもつながっていくということです。

これは、保育や子育てに関わる私たちにとって、大きな意味を持つ話だと感じます。目の前の子どもの「今」の元気さだけでなく、その子の「これから」の健康にも関わっているのだと考えると、日々のちょっとした外遊びや体を動かす時間の一つひとつが、とても大切なものに思えてきます。

家庭・学校・地域、それぞれができること

記事の最後では、学校現場での保健体育の授業や環境整備、いわゆる「ヘルスプロモーティングスクール」の枠組みに沿った取り組みなどが紹介されています。もちろん、これは学校だけの課題ではありません。家庭でできる小さな工夫、地域の公園や遊び場の環境づくり、保育・子育て支援の現場での声かけなど、それぞれの立場でできることがあるはずです。

私自身、保育園の運営に携わっていた立場から改めて感じるのは、「体を動かすことは特別なことではなく、生活の中に自然と組み込まれているもの」だということです。子どもが元気に体を動かせる環境を、大人たちが少しずつ整えていく。そんな積み重ねが、子どもたちの「今」と「未来」の健康を支えていくのだと思います。


参考:石井香織「活動的で元気な子どもを育む健康教育」日本健康教育学会誌 第34巻第3号(2026年)

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