結論:保育ICTは「導入する時代」から「使いこなす時代」へ
保育現場のICT導入はすでにかなり進んでいます。
実際、保育施設の約8割が何らかのICT機能を導入しており、今や「ICTを入れるかどうか」を議論する段階ではなくなりつつあります。
一方で、現場ではまだ
- 費用負担
- 職員のICTスキル不足
- 手書き文化との共存
といった課題が残っています。
つまり、これから重要なのは、
「導入したか」ではなく、「どう現場で活かすか」。
ICTは単なる効率化ツールではなく、子どもと向き合う時間を増やし、保育の質を高めるための手段です。
今回は、西九州大学紀要に掲載された論文
「保育現場におけるICT活用の現状と課題―CiNii Researchを用いた研究動向に関する一考察―」
(坂元美帆・田中麻里・高元宗一郎, 2026)をもとに解説します。
論文の概要
タイトル
保育現場におけるICT活用の現状と課題
―CiNii Researchを用いた研究動向に関する一考察―
著者
- 坂元美帆(神埼市立ちよだ保育園)
- 田中麻里(西九州大学 子ども学部 子ども学科)
- 高元宗一郎(西九州大学短期大学部 地域生活支援学科)
掲載誌
西九州大学子ども学部紀要 第17号(2026)
研究内容
2015~2025年の保育ICT研究をCiNii Researchで分析し、保育現場でのICT活用の広がりと課題を整理した文献研究です。
保育ICT導入率は8割超
2025年調査では、
- 何らかのICT機能を導入している施設:80.8%
- 主要4機能すべて導入:11.7%
という結果でした。
主要4機能は、
- 保護者連絡
- 登降園管理
- 保育計画・記録
- 指導要録・児童票作成
です。
つまり、
一部導入は進んでいるが、フル活用できている園はまだ少ない
ことが分かります。
ICT導入のメリット
1. 安全性の向上
ICT導入によって、
- 登降園管理
- 午睡チェック
- 緊急連絡
- ヒヤリハット共有
などが効率化されます。
特に、
- お迎えミス防止
- SIDS対策
- 災害時連絡
など安全面でのメリットは非常に大きいです。
2. 業務効率化
効率化できる業務は多岐にわたります。
- 連絡帳
- 日誌
- 指導案
- 写真共有
- 給食費徴収
- シフト作成
特に保護者連絡の効率化は大きく、
電話対応や紙配布の負担軽減につながります。
保護者側のメリットも大きい
保護者からは、
- 入力が楽
- 写真で様子が分かる
- 情報確認しやすい
- 家族共有しやすい
といった評価が見られました。
紙より便利だと感じる保護者も増えています。
現場に残る3つの課題
1. 費用
未導入理由で最も多いのは費用です。
- 初期費用
- 月額利用料
- 端末購入
- Wi-Fi整備
特に小規模園では導入ハードルが高い状況です。
2. ICTリテラシー不足
導入しても、
- 使い方が分からない
- 慣れていない
- 入力に時間がかかる
という課題があります。
結果として、
紙とシステムの二重運用
になりやすいのが現実です。
3. 手書き文化との共存
保育現場では、
- 手書きの温かみ
- 連絡帳文化
- 保護者との関係づくり
を大切にする声も根強くあります。
そのため、
全部デジタル化=正解ではない
という難しさがあります。
大事なのは「全部置き換えない」こと
ICT向きの業務と、人がやる価値の高い業務を分けることが重要です。
ICT向き
- 登降園管理
- 欠席連絡
- 午睡記録
- シフト
- 写真共有
アナログが活きる場面
- 個別メッセージ
- 特別な連絡
- 温かみを伝えたいやりとり
全部を置き換えるのではなく、
人にしかできない仕事へ時間を戻す
発想が必要です。
まとめ:保育ICTの本当の目的は「子どもと向き合う時間を増やすこと」
保育ICTの目的は、単なる効率化ではありません。
本来は、
- 子どもと向き合う時間を増やす
- 職員間共有を深める
- 保護者との信頼関係を高める
ためのものです。
書類や連絡業務の負担が減れば、
- 子どもの姿を振り返る
- 職員同士で対話する
- 保育の質を高める
余白が生まれます。
保育ICTは、保育士をラクにするだけではなく、
保育そのものをより良くするためのインフラと言えそうです。
結論(再掲)
保育ICTはすでに導入フェーズを超えつつあります。
今後のテーマは、
「どの機能を入れるか」ではなく「どう現場に定着させるか」。
- 費用
- ICTスキル
- 手書き文化
という壁はあるものの、うまく活用できれば、
業務負担軽減 × 保育の質向上
の両立は十分可能です。
これからの保育現場に必要なのは、ICTかアナログかの二択ではなく、
「何をICT化し、何を人が担うか」を見極める視点なのかもしれません。



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