【論文】保育の質は「いい先生」だけでは決まらない。施設長による環境づくりが園を変える

働き方

結論からいうと、保育環境づくりは担任や保育士だけの仕事ではありません。

今回紹介する論文では、施設長(園長)が

  • 自ら環境を改善する「リデザイナー」
  • 職員が環境を考え続けられる仕組みを作る「マネジャー」

という2つの役割を担っていることが明らかになりました。

つまり、保育の質を上げるためには、
個人の力量だけでなく、環境改善を組織として回せる園づくりが必要ということです。


論文概要

タイトル
幼児教育・保育実践における環境構成に係る「保育環境のリデザイン」
-施設長が行う組織マネジメント上の営みの特質に焦点をあてて-

著者・所属

  • 田中 謙(山梨大学教育学部 非常勤講師/日本大学)
  • 池田 幸代(道灌山学園保育福祉専門学校)
  • 山田 裕宇記(社会福祉法人にじの会 小金西グレースこども園)
  • 高根沢 康浩(社会福祉法人徳育会 東立石保育園)

掲載誌
教育実践学研究 31(2026)


保育環境は「作って終わり」ではない

保育では「環境を通した教育」が基本です。

たとえば、

  • 絵本をどこに置くか
  • 遊びコーナーをどう分けるか
  • 子どもが落ち着ける場所をどう作るか
  • 動線をどう確保するか

といった環境そのものが、子どもの学びや安心感に影響します。

しかし、

  • 子どもの発達段階
  • クラス構成
  • 特別支援ニーズ
  • 保護者ニーズ

は日々変化します。

だからこそ、一度整えた環境も見直し続ける必要があります。

この論文では、その見直しを**「保育環境のリデザイン」**と呼んでいます。


事例① 施設長自ら環境を変える「リデザイナー」

1つ目の園では、施設長が共用部にビーズクッションを導入しました。

導入のきっかけ

外部研修で、

  • 筋緊張が高い子どもに有効
  • 情緒安定につながる

という知見を得たためです。

施設長はその知識をもとに、

  • 図書コーナー
  • 事務室

へビーズクッションを配置しました。

すると、

  • 落ち着いて過ごせる
  • 帰宅前に気持ちを整えられる
  • 特別支援ニーズのある子が安定する

などの効果が見られました。


課題が出たらすぐ改善

もちろん、導入後には課題も発生。

  • 滑って危ない
  • 汚れやすい
  • 子どもが離れたがらない
  • 登園がスムーズにいかない

などです。

そこで施設長は、

  • 滑り止め追加
  • カバー導入
  • 砂時計設置
  • 朝だけ撤去

など細かく改善。

つまり、

導入 → 観察 → 修正 → 再設計

を繰り返していました。

これが保育環境のリデザインです。


保護者の声も改善材料にする

この園では保護者にもヒアリング。

たとえば、

急いでいる日はない方が助かる

という声を受け、

  • 朝は片付ける
  • 帰りだけ出す

という運用へ変更。

子どもだけでなく、

  • 保護者
  • 職員

の視点も環境改善に取り入れている点が特徴です。


事例② 職員が環境を考えられる仕組みを作る「マネジャー」

2つ目の園では、施設長が直接環境を変えるより、

職員が環境を考え続けられる仕組みづくりに注力していました。


外部研修に行きやすい勤務体制

  • 第二担当配置
  • 研修参加しやすいシフト調整

を導入。

学びたい研修へ参加しやすい体制を整えています。


研修後の振り返り時間確保

研修後には、

30〜60分のノンコンタクトタイム

を確保。

学びを整理して現場へ落とし込みやすくしています。


月1回の園内対話

職員をグループに分け、

  • 保育観
  • 園理念
  • 環境づくり

について話し合う時間を設定。

目的は、

「この園らしい保育」を職員自身が考えられるようにすることです。


論文から見えた施設長の2つの役割

① 保育環境のリデザイナー

施設長自身が直接環境改善を行う役割。

例:

  • 共用部改善
  • 動線変更
  • 安全対策
  • 新しい環境資源導入

② 保育環境のマネジャー

職員が環境改善できる組織を作る役割。

例:

  • 研修体制整備
  • シフト管理
  • 対話機会づくり
  • 情報共有

明日から現場でできること

小さく試す

いきなり大改革ではなく、

  • 1つ変える
  • 観察する
  • 修正する

で十分。


職員の違和感を拾う

  • ここ危ないかも
  • この配置使いづらい

という声が出せる空気づくりが大切です。


保護者の困り感もヒントにする

  • 登園しづらい
  • 帰りづらい
  • 待ち時間が長い

といった声も環境改善の材料になります。


まとめ

結論として、保育環境づくりは担任や保育士だけの仕事ではありません。

施設長には、

  • 自ら環境を改善するリデザイナー
  • 職員が考え続けられる仕組みを作るマネジャー

という2つの役割があります。

忙しい現場では「今あるもので回す」になりがちですが、

少しの配置変更や運用改善が、子どもの安心感や主体性を大きく変えることがある。

だからこそ、

「環境構成は保育士のセンス任せ」ではなく、
園全体で改善し続ける文化づくりが重要だと感じさせられる論文でした。


こんな人におすすめ

  • 園長・施設長
  • 主任保育士
  • 環境構成に悩む保育士
  • 保育の質改善に興味がある人

施設運営や組織づくりに関心がある人は、かなり参考になる内容です。

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