この記事のまとめ
- 裸足保育の園に通う年長児(36人)と、通っていない園の年長児(47人)、合計83人で「靴を履いて10m走ったときの走り方」を比べた研究です。
- 走るタイムは、裸足保育の園の子のほうが有意に速いという結果でした。
- 足の着き方(かかとから着くか、つま先側から着くか)には差がなく、どちらも約83%の子がかかとから着いていました。
- 裸足保育の子は、地面を蹴り出している時間が長く、一歩の幅(歩幅)が大きいという特徴がありました。
- ただし対象は少数の園に限られ、園の運動方針や普段の活動量は調べられていません。「裸足保育のおかげで速くなった」と断定はできません。
裸足保育って、走りにも関係あるの?
私が通っていた保育園も、裸足保育でした。成長に影響があったかどうかはわかりませんが、土のひんやりした感触や、水たまりに足を踏み入れたときの感触は、今でも覚えています。
今は学びの多様化学校を運営する法人で働き、中1と小2の子を持つ父親として、こうした「子どもの体づくり」の話は今も気になります。裸足で過ごすと足の裏の土踏まずができやすい、外反母趾になりにくい、足の指がしっかり地面につく、といった話は、以前から研究で報告されてきました。
一方で、走り方のような動きの面から裸足保育を調べた研究は、これまでなかったそうです。今回の論文(日本幼少児健康教育学会誌 第12巻、2026年)は、その空白を埋めようとしたものです。
研究者たちが考えた「仮説」
もともと、大人でも子どもでも「裸足で走ると着地がつま先寄りになる」ことが知られています。かかとで着地すると衝撃が強く、裸足だと痛いので、無意識に足の前のほうで着くようになるためです。
そこで研究者たちは考えました。普段から裸足で過ごしている子は、その走り方が身についていて、靴を履いてもつま先寄りで走るのではないか、と。
どんな方法で調べた?
対象は年長児83人です。裸足保育をしている保育園4園の36人と、していない幼稚園1園の47人。年齢、身長、体重に、2つのグループの差はほとんどありませんでした。
子どもたちは、普段園で履いている内履きの靴で、体育館や遊戯室の木の床を10m全力で走りました。走りのタイムに加えて、足が地面についている時間、宙に浮いている時間、一歩の幅などを専用の機器で測り、足の着き方は240コマ/秒の高速度カメラで撮影して判定しています。
結果その1:足の着き方は、ほぼ同じだった
仮説に反して、着地のしかたに差はありませんでした。かかとから着地した子は、裸足保育の園で83.3%、そうでない園で83.0%。ほとんど同じです。
研究者たちは、裸足保育の子も靴を履けばクッションで衝撃が和らぐので、自然とかかとから着く「靴向きの走り方」に切り替えているのだろうと考察しています。裸足のときの走り方と靴のときの走り方を、子どもなりに使い分けているわけです。
結果その2:それでも、タイムは裸足保育の子のほうが速かった
意外だったのはここからです。走りのタイムは裸足保育の園の子のほうが有意に速く、スピードも高くなっていました。
特徴的だったのは次の点です。
- 一歩の幅(歩幅)と、同じ足が次に着くまでの幅が大きい
- 地面を蹴り出している時間が長い
- 足の裏全体が地面についている時間は短い
つまり裸足保育の子は、着地したらかかとを早めに上げて、そのあとつま先側でぐっと地面を押す時間をしっかりとっている、と研究者たちは推測しています。その分だけ地面を強く押せて、一歩が大きくなり、結果として速くなっているのかもしれません。足の指で地面をつかむ力が育っていることと、つながっていそうな話です。
一方、地面に着いている全体の時間、宙に浮いている時間、足の回転の速さには差がありませんでした。「足をせわしなく動かして速くなる」のではなく、「同じ時間の中で、より大きな力を地面に伝えている」というイメージです。
「裸足保育=足が速くなる」と言い切れない理由
ここは冷静に読みたいところです。論文自身も、因果関係については慎重になるべきだと書いています。理由は主に3つあります。
- 人数と園の数が少ない。 裸足保育の園が4園、そうでない園は1園だけです。園ごとの雰囲気や方針の違いが、結果に混ざっている可能性があります。
- 園の運動方針や日頃の活動量は調べていない。 たとえば、外遊びや運動に力を入れている園なら、裸足かどうかに関係なく足は速くなりそうです。
- 「裸足保育だから」ではなく「もともと走るのが得意な子が多い園だった」可能性も否定できない。
なので、この研究から言えるのは「裸足保育の園の子は、走りに違いが見られた。その一因として裸足保育が関係している可能性がある」というところまでです。
保護者として、園の関係者として、どう受け取るか
私自身、この結果を「裸足保育にすれば足が速くなる」という宣伝文句にするのは違うと思います。ただ、足の形の研究に続いて、動きの面でも「悪くない、むしろ良さそう」というヒントが出てきたのは、興味深い点です。
裸足保育の園を選ぶかどうかは、走りの速さだけでなく、園の考え方や子どもの性格、衛生面や安全面など、いろいろな要素で決まるものです。速さは、その中のひとつの参考材料くらいに考えるのがちょうどいいのではないでしょうか。
研究者たちも、対象の園と子どもを増やし、より厳密な方法で調べていく必要があると述べています。今後の研究が積み重なっていけば、裸足保育の効果はもっとはっきりしてくるはずです。
参考文献
松田繁樹、出村友寛、淺川正堂、三谷林太郎(2026)「幼児期の裸足保育が走ステップ変数および接地様式に及ぼす影響」『日本幼少児健康教育学会誌』12, 30-36.
