この記事のまとめ
- 大阪商業大学の研究者による論文を、子育て世代の父親の目線で読み解きました
- 分析対象は、全国の20代〜40代の女性616人(2010年の大規模な社会調査のデータ)
- 町内会・自治会などの地域活動に参加している割合は、子どもがいない女性で約22%、子ども1人で約46%、2人で約76%、3人で約81%でした
- 年齢、結婚しているか、持ち家かといった条件をそろえても、子どもがいる女性のほうが地域活動に参加している傾向がありました
- 一方で、6歳以下の子を育てる女性は「時間にゆとりがない」と感じる人が多く、働いている人も少なめでした。それでも参加する傾向は変わりませんでした
- 子どもの年齢が小さくても大きくても、「子どもの存在」が地域とのつながりのきっかけになっている可能性があります
- 裏を返すと、子どもがいない人は地域に関わるきっかけを得にくいかもしれません。誰もが入りやすい入口づくりが大切だと論文は結んでいます
「子どもがいる家は地域に出ていく」は本当か
46歳、中学1年生と小学2年生の父親です。以前は保育園で運営や採用を担当し、いまは学びの多様化学校を運営する法人で働いています。子どもたちが育つ場を長く見てきたせいか、「子どもがいると、家族は自然と地域に出ていくものだな」と感じることが何度もありました。
運動会の準備、夏祭り、登下校の見守り、地域の清掃活動。子どもを真ん中に置くと、普段は挨拶程度の人たちとも顔を合わせる機会が増えます。この実感がデータでも裏付けられるのか、気になって読んでみたのが今回の論文です。
素敵なエピソードですね。論文が示していた「子どもを通じて近所の人との結びつきが深まる」という点を、そのまま体現したお話だと思います。しかも、つながりの輪が「子どもがいる家庭」だけでなく、子どもが小さい家庭を見守る高齢のご夫婦から始まっているところが、記事の締めの「入口をつくる」というテーマにもよく合います。
そこで、冒頭の導入部分(「46歳、中学1年生と小学2年生の父親です…」の段落)の後ろに入れる形で、エピソードの節を書いてみました。
アパートの近所に住んでいた、70代のご夫婦のこと
子どもたちがまだ小さかった頃、私たち家族はアパートに住んでいました。その近所に、70代のご夫婦が暮らしていました。
顔を合わせるたびに、「大きくなったねえ」「今日は寒いから気をつけてね」と、よく声をかけてくださる方たちでした。ほんの短いやり取りですが、それが妻にとっては大きな支えになっていたようです。小さな子どもと過ごす毎日の中で、「自分は社会とつながっている」と感じられたこと。精神的にしんどい時期にも、何気ない会話に助けられたこと。後になって、妻がそう話してくれました。
その後、ご夫婦の娘さん夫婦にも赤ちゃんが生まれ、今度は娘さんとも親しくさせてもらうようになりました。子どもをきっかけに、世代をまたいでつながりが広がっていったのです。
あのご夫婦は、いまもお元気でしょうか。今回の論文を読みながら、ふとそんなことを思い出しました。
616人の女性に聞いた調査
この研究は、2010年に行われた全国規模の意識調査のデータを使っています。対象は20代〜40代の女性616人で、「町内会・自治会の活動(それに関連した地域活動を含む)に参加しているか」を調べました。
なお、ここでの「参加」は、「まったく参加していない」以外のすべてを指します。年に1回程度でも「参加している」にカウントされるので、毎週のように活動している人だけの話ではありません。
子どもの数が増えるほど、参加する人が増える
結果ははっきりしていました。地域活動に参加している女性の割合は次のとおりです。
- 子どもがいない女性:約22%
- 子どもが1人:約46%
- 子どもが2人:約76%
- 子どもが3人:約81%
子どもがいない人では5人に1人ほどなのに、子どもが2人いると4人に3人が何らかの形で参加しています。かなりの差です。
もちろん、「子どもがいる人は年齢が高めで、持ち家で、結婚している人が多いから参加しているだけでは?」という疑問が出てきます。そこで研究者たちは、年齢、結婚の有無、持ち家かどうか、住んでいる年数、住んでいる地域の規模といった条件の違いを統計的にならしたうえで、子どもの影響だけを取り出して調べました。
それでも、子どもがいる女性のほうが参加する確率は約28ポイント高く、子どもが1人増えるごとに約15ポイントずつ高くなるという結果でした。持ち家の人や結婚している人も参加しやすい傾向がありましたが、子どもの存在はそれらと並んで、はっきりした影響を持っていました。
「忙しいから参加できない」わけではなかった
ここで気になるのが、「小さい子の子育て中は、それどころじゃないのでは?」という点です。
同じ調査の別の質問を見ると、末っ子が6歳以下の女性は、子どもがいない女性に比べて「時間にゆとりがない」と感じる人が多く(約63%対約48%)、働いている人の割合は少ない(約44%対約79%)ことがわかりました。仕事を辞めたり減らしたりして、その分を子育てに使っているのに、時間のゆとりはむしろ少ないということです。これは子育て中の方なら、深くうなずく結果だと思います。
それでも、6歳以下の子を育てている女性は、子どもがいない女性より地域活動に参加している傾向がありました。研究者は「時間がなくても、子どもがいる人は地域活動に参加することを選ぶ傾向があるのかもしれない」と見ています。
子どもが小さくても大きくなっても、効果は続く
もうひとつ面白かったのが、子どもの成長段階による違いです。
「子どもが全員6歳以下」「少なくとも1人が小学生(7〜12歳)」「全員が13歳以上」というグループに分けて比べても、どのグループでも子どもがいない女性より参加する傾向が見られました。なかでも、小学生の子がいる家庭の影響が一番大きく出ています。
私も実感がありますが、小学生の時期は、学校の行事、地域の子ども会、習い事の送迎など、地域の大人とつながる場面が一気に増える時期です。保育園のころは園の中で完結していた世界が、小学校に入ると地域に広がっていく感じです。データもその感覚と合っているように思いました。
なぜ子どもがいると地域に出ていくのか
論文では、理由として次のような可能性が挙げられています。
- 地域活動の中に、子どもと一緒に参加できるものが含まれているから
- 子どもを通じて、近所の人との結びつきが深まるから
- 地域活動に参加する姿を子どもに見せたいという、教育的な気持ちがあるから
私は3つめにぐっときました。「親が地域で顔の見える関係を築いていると、子どもも安心して地域で育つ」という感覚は、保育や教育の現場にいると強く感じます。
忘れたくない、この研究の限界
ここで、この研究の注意点にも触れておきます。
- 調査は2010年のデータで、いまとは社会の状況が違う可能性があります
- 対象は女性だけで、父親の傾向はわかりません
- 「地域活動」は町内会・自治会が中心で、NPOやサークル、オンラインのつながりなどは含まれていません
- 統計でならしきれていない要因もあり、子どもの影響が実際より大きく出ている可能性があると、著者自身が書いています
- 「子どもがいるから参加する」という因果関係を、完全に証明したものではありません
つまり、「子どもがいれば誰でも地域に参加する」と言える研究ではありません。あくまで、そうした傾向が見られたという話です。
子どもがいない人にも、入口を
私がこの論文で一番大切だと思ったのは、最後の部分です。
子どもがいる人は、子どもがきっかけで地域とつながれます。逆に言えば、子どもがいない人は、そのきっかけが得られにくいということです。論文は、子どもの有無にかかわらず参加しやすい環境をつくることが、地域のつながりを強めるために大切だと結んでいます。
また、子育て中の親が時間のない中でも地域に出ていくのだとしたら、その負担を減らす工夫も大切です。無理なく参加できる仕組み、短時間でも関われる役割、気軽に顔を出せる場。そういう入口がたくさんあると、子どもがいる人もいない人も、もっと地域とつながりやすくなるはずです。
子どもがいると、地域は自然と近づいてきます。でも、そのきっかけを持たない人にも、同じように入口が開かれている地域であってほしいなと、父親として、また教育に関わる仕事をする者として思いました。
参考:中野浩司・小林俊和「子どもをもつことが地域活動への参加に与える影響」『大阪商業大学論集』第22巻第2号(大阪商業大学学術情報リポジトリ、CC BY-NC-SA 4.0)

