豊島区が公表した保育所への指導検査の結果を、保護者の目線で読み解きます。対象は、令和7年度の一般指導検査で指摘があった18園(私が確認できた資料の範囲)と、令和8年10月2日に公表された「しいの実保育園」への特別指導検査です。
まず全体のまとめ
- 最も重い事例は、しいの実保育園の食物アレルギー事故です。 令和8年5月、誤食でアナフィラキシーショックを起こした園児が救急搬送されました。回復して現在は元気に通園しているとのことです。
- この事故の背景には、前年度の指導があります。 令和7年度の検査で「アレルギー児の対応が不十分」と指導され、「改善した」と報告されていたのに起きた事故でした。
- 同じ園で、行政に報告すべき事故が報告されていませんでした。 「見失い」「置き去り」「誤食」などが対象です。
- 一般指導検査で最も多かったのは、職員配置の問題です。 他の園へのヘルプ勤務で「専任」の条件を満たしていない、区への配置報告が実態と違う、といった指摘が7園でありました。
- 職員が足りない時間帯があった園も複数あります。 保育士2名体制でなかった園が3園、常勤職員が不在の時間帯があった園が2園です。
- 避難・消火訓練の未実施、安全計画の未策定、安全点検の不備も、合わせて7園で指摘されました。
- 検便(食中毒予防のための検査)の不備が5園、お金の管理の不備が4園ありました。
- 今回の資料には、虐待など人権侵害にあたる指摘や、午睡(お昼寝)チェック漏れの指摘は見当たりませんでした。 資料にないことは書けないため、この記事では扱っていません。
- 「指摘があった」ことは、すぐに「危ない園」を意味するわけではありません。 ただ、指摘の中身は園選びや日々の確認の参考になります。
1. 命にかかわる指摘
① アレルギー事故と、事故の未報告・見失い
解説
園児の命に直結する分野です。アレルギー対応では、除去食の提供ミスが重い事故につながります。また、事故やヒヤリとした出来事を行政に報告しないと、原因の検証や再発防止ができません。
しいの実保育園(特別指導検査)
区が指摘した主な点は次のとおりです。
- 前年の指導の内容が職員に十分共有されず、園全体で改善を続けていなかった
- アレルギーの重要書類に記載漏れや不備があり、職員が集まって対策を考える委員会もなかった
- アレルギーの子への対応が、調理担当と各クラス担当でバラバラだった
- 食器の色分けや座席の配置、調理・配膳・提供までの二重三重のチェックが不十分だった
- 医師の指示書や保護者の依頼書がないまま薬を預かり、医師の指示なしに与薬した
- 「見失い」「置き去り」「誤食」などの事故報告を怠り、検証も再発防止の検討も不十分なまま、事故を繰り返していた
- 園長が事態を把握しながら、園全体の状況把握や情報共有、職員への指導で主体的に動いていなかった
- 職員の自己評価や、それを踏まえた保育の改善を行っていなかった
区は今後、改善状況の報告を受けて確認し、改善が確実になるまで見守り(モニタリング)を続けるとしています。区立保育園の保育士経験者による巡回訪問で、技術的な支援も行われます。
グローバルキッズ東池袋園(一般指導検査)
令和6年度の事故報告を行っていませんでした(8件)。
② 職員の不足・不在
解説
子どもの安全は「目が行き届く人数がいるか」で大きく変わります。朝や夕方の早番・遅番は、特に職員が少なくなりがちな時間帯です。
保育士2名体制になっていない時間帯があった園
- にじいろ保育園千早(令和7年7月4日の遅番)
- 明日葉保育園池袋園(令和7年9月6日の早番)
- グローバルキッズ東長崎園(日付の記載なし)
常勤職員がいない時間帯があった園
- グローバルキッズ北池袋園(令和7年8月13日の朝、常勤保育士の配置なし)
- グローバルキッズ東長崎園(令和7年11月17日・18日の早番、非常勤職員のみ)
園長(施設長)が不在になっていた園
- 長崎森のなかま保育園は、施設長が他の園へヘルプに出ており、専任になっていませんでした(令和5年4月17日)。
③ 他の園へのヘルプ勤務による「専任」の条件違反と、報告の食い違い
解説
園には、常勤の保育士や調理員をその園の専任として置く決まりがあります。ところが他の園へヘルプに出ていて、条件を満たしていませんでした。さらに、区への職員配置の報告が実態と違い、人数が足りない月があった園もあります。人手不足の園が、やりくりで穴を埋めようとした結果とも読めます。
該当園(7園)
- 椎名町ちとせ保育園(常勤調理員)
- ミアヘルサ保育園ひびき高田
- 大空と大地のなーさりぃ第一南大塚園(常勤保育士と常勤調理員)
- にじいろ保育園千早(常勤調理員)
- ベネッセ 雑司が谷保育園(常勤調理員)
- 明日葉保育園池袋園(常勤調理員)
- 長崎森のなかま保育園(常勤保育士)
ミアヘルサ保育園ひびき高田は、資料に誰の専任要件かの記載がありません。
④ 災害・事故への備え
解説
災害や事故は、いざという時に動けるかどうかが勝負です。訓練や計画、点検を日ごろから続けておく必要があります。
避難訓練・消火訓練を毎月実施していない
- 椎名町ちとせ保育園
- グローバルキッズ北池袋園
- にじいろ保育園千早(消火訓練)
安全計画を作っていない
- 千早子どもの家保育園
- めぐみ保育園
- 雑司が谷保育園
安全点検を定期的にしていない
- 長崎森のなかま保育園
避難に有効な非常口が、2か所2方向そろっていない
- にじいろ保育園千早(1階と2階の水遊び場)
2. 子どもの健康・衛生にかかわる指摘
検便の不備
解説
給食の調理や調乳(ミルク作り)をする人の検便は、食中毒を防ぐための基本です。結果が確認できないまま調理や調乳に関わっていたことが、指摘されています。
該当園(5園)
- にじいろ保育園千早
- アスク池袋本町保育園(調理担当者1名)
- みのり保育園(調乳担当者1名)
- いけぶくろこころ保育園(調乳担当1名、令和7年3月)
- グローバルキッズ東長崎園(令和7年12月分、調理と調乳の担当)
長崎森のなかま保育園も、調理担当1名の検便を実施していませんでした(令和7年3月)。合わせると6園です。
3. 保育の環境にかかわる指摘
子どもの人数に対して部屋が狭い、設備が届出と違う
解説
子ども1人あたりに必要な面積が決まっています。棚やピアノを増やして、基準を下回った園がありました。また、棚などを増設したのに、区への設備の届出と現状が一致していない園もあります。
基準面積が不足していた園
- 千早子どもの家保育園(4・5歳児室)
- にじいろ保育園千早(3歳児室)
- 明日葉保育園池袋園(0歳児室)
設備の届出と現状が不一致だった園
- にじいろ保育園千早(2〜5歳児室、改善確認未)
- 明日葉保育園池袋園(0歳児室)
開所時間の確認ができない
- いけぶくろこころ保育園は、令和7年11月15日と22日に、11時間開所の確認ができませんでした。
4. お金の管理にかかわる指摘
解説
保育園の運営費は、子どもの保育のために公的なお金で支えられています。園や法人のお金の扱いが不適切だと、長い目で見て園の運営が不安定になるおそれがあります。保護者の目に触れにくい分野ですが、大切な点です。
貸借対照表(お金の状況を表す書類)を適正に作っていない、積立資産に見合う預貯金を持っていない
- にじいろ保育園千早(改善確認未)
- にじいろ保育園落合南長崎(改善確認未)
法人のお金のやりくりに関する指摘
- おおつかほうゆう保育園は、他の拠点への貸付金が年度内に返済されておらず、法人本部の運営費を当年度の委託費から支出していました。
- いけぶくろこころ保育園は、前期末支払資金の取り崩しについて、理事会の事前承認が適正に行われていませんでした。本部職員の人件費も適正に支出していませんでした。
5. 一番指摘が多かった園
一般指導検査で最も指摘が多かったのはにじいろ保育園千早で、10項目に及びます。そのうち3項目(設備の届出、貸借対照表、積立資産)は「改善確認未」とされています。ただし、指摘の件数と園の安全性は単純には比べられません。書類や設備の指摘も数に含まれているためです。
保護者として何を見ればいいか
- アレルギーの子への対応が、組織として決まっているか。 見学や面談で、食器の色分けや提供前のダブルチェックの有無を聞いてみてください。
- 朝夕の早番・遅番に、何人の職員がいるか。
- 避難訓練が毎月あるか、安全計画が保護者にも共有されているか。
- 園でヒヤリとした出来事や事故があったとき、保護者にきちんと知らせてくれるか。
しいの実保育園の事例は、「改善しました」という報告だけでは足りないことを示しています。改善が続いているかを、区が見守り続けることが大切です。
補足(読者への注意)
- 本記事は、豊島区が公表した資料をもとに作成しています。
- 令和7年度の一覧は、私が確認できた資料に載っていた18園の分です。他の園の結果は含まれていません。
- 特別指導検査の経過の日付に、資料上で前後が合わない箇所がありました(施設調査と職員・保護者ヒアリングの日付)。正確な日付は、区の公表資料をご確認ください。


