保育園の「開いている時間」は、どこまで延びたのか。延びた先に残る「外側」の話

働き方

この記事のまとめ

  • 保育園が足りない問題は、園を増やすだけでなく「預かる時間を延ばす」ことでも支えられてきた
  • 東京都の認可保育所3,551か所のうち、95.7%が延長保育をしている
  • 13時間以上開いている園は、公立で約2割、営利法人の運営で約7割と、運営主体で大きな差がある
  • 朝の始まりは市部のほうが早く、区部は遅め。夜の終わりは、ほぼ19時台〜20時台に集まっている
  • 延長保育でも、急な残業や、お迎えがわずかに遅れる場面には対応しきれない
  • 保育の時間が延びた分、保護者の「調整する仕事」が増えているという指摘がある

「園が足りない」の裏で、静かに延びていたもの

待機児童が社会問題だった頃、解決策といえば保育園を増やすことでした。ところが、畔蒜和希さん(京都大学)の研究報告を読むと、それと並んで「預かる時間そのものが長くなる」ことも、供給不足を支えてきたと言います。

私は以前、保育園で運営や採用を担当していました。シフトを組む側として、開所時間が延びることが現場にどんな重みをもたらすかは、少しわかるつもりです。ただ、「東京全体で実際どうなっているのか」を数字で見たことはありませんでした。この報告は、2025年6月時点で東京都の認可保育所3,551か所の開所時間を、自治体の一覧や各園のホームページから一か所ずつ調べたものだそうです。地道な作業です。

延長保育は「あるのが当たり前」になっていた

まず驚いたのは、調べた園の95.7%にあたる3,399か所が延長保育を実施していたことです。ほとんどの園にとって、延長保育はもう特別なサービスではなく、標準装備になっています。

開所時間の長さは、運営主体によってかなり違います。13時間以上開けている園の割合は、区や市が運営する園で21.4%、営利法人が運営する園では69.3%でした。民間の園ほど長く開けている傾向がはっきり出ています。

朝は郊外が早く、夜はどこも同じ

認可保育所は、1日11時間までを「標準」の保育時間とし、その前後を延長保育で補う仕組みです。標準の時間帯は、ほとんどの園が7時から18時30分の間に収まっています。

面白いのは市部と区部の違いです。市部には7時〜18時を標準とする園が多く、区部は朝も夕方も少し後ろにずれています。都心まで通勤に時間がかかる郊外ほど、朝早くから預かる必要があるのでしょう。筆者もそうした可能性を示唆しています。

一方、夜は地域差がほとんどありません。延長を含めた閉所時刻は、19時台が1,637か所、20時台が1,700か所で、ほぼこの二つに集中しています。21時以降まで開けている園はわずか46か所でした。「20時台がひとつの上限」になっているように見えます。

本当に考えたいのは、延びた時間の「外側」

この報告のいちばん大事なところは、ここからだと思います。時間が延びても、その外側にはこぼれ落ちるものがあります。

  • 延長保育は事前の申請が必要で、急な残業には対応しにくい
  • 当日申し込めるスポット利用も、空きがあればの話で、使える保証はない
  • お迎え時間は厳守が前提で、少し過ぎただけで延長料金がかかる園もある
  • 園の場所や通勤距離によっては、延長保育を毎日使わざるを得ない家庭もある

その隙間を埋める手段として、ファミリー・サポート・センターの送迎支援や、マッチング型のベビーシッターがあります。ただ、前者は事前申込が必要で枠も少なく、後者は料金が高めです。

結果として、多くの保護者は複数の支援やサービスをその都度組み合わせて、育児と仕事を両立させています。報告は、その負担が睡眠や食事、毎日の移動といった体にまで及んでいると指摘します。そして、保育の時間的拡張は子育てを施設に任せる過程であると同時に、新しい「調整の仕事」を保護者に配り直す過程でもある、と結んでいます。

読んで思ったこと

小学2年と中学1年の子を持つ父親としても、「調整する仕事」という言葉は他人事ではありません。保育園の時期を過ぎても、学童、習い事、学校との連絡と、形を変えて調整は続きます。

いまは学びの多様化学校を運営する法人で働いていて、子どもの居場所には「決まった時間の枠」だけでは収まらないものがあると、日々感じています。保育園の開所時間をどこまで延ばすかという議論は、働く親を支えることと、子どもがゆったり過ごせる時間を守ることのバランスの問題でもあります。時間を延ばせば解決、という話ではなさそうです。

数字を見ると、まず園や運営主体による違いを知ることが、自分の家庭に合う園を選ぶ手がかりになりそうです。そのうえで、延びた時間の「外側」を誰がどう支えるのかを、社会全体で考えていく必要があるのだと思いました。

参考:畔蒜和希「保育サービスの時間的拡張とその『外側』」(京都大学・日本学術振興会特別研究員)

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