世田谷区のR7年度の監査結果について

東京都

保育園の運営に長く携わってきた身として、こういう行政の監査結果は毎年目を通すようにしています。今回は世田谷区が公表しているR7年度の指導検査結果を、できるだけ専門用語を使わずに整理してみました。

保育の現場を離れて久しい方にも分かるように、「何が起きていたのか」「命や安全に関わる話かどうか」を軸にまとめています。

まず結論から

  • 世田谷区内で指摘のあった認可保育所等は、今回確認できた範囲で約50件弱
  • 大半は「改善済み」となっていますが、一部、改善中・未改善のまま残っている案件があります。
  • 特に気になったのが「ねいろ保育園」です。常勤保育士が配置されていない時間帯があったことや、児童一人ひとりを尊重した保育ができていなかったという指摘が、未改善のまま残されています。
  • 件数として一番多いのは、消火訓練の未実施や検便結果の確認漏れ、会計書類の不備といった、いわゆる「手続き上の指摘」です。ただ件数が多いからといって軽く見ていいわけではなく、積み重なると重大事故につながりかねないものも含まれています。

ここから先は、指摘の内容を「命や安全に直結するもの」から順に紹介していきます。

命・安全に直結する指摘

保育の現場にいた人間として、まずここを一番気にして読みました。

午睡中の見守り不足

睡眠中の乳幼児は、うつぶせ寝や呼吸停止など、目を離した瞬間に命に関わる事故が起こり得ます。定期的な呼吸・体位のチェックが適切に行われていなかったという指摘が、烏山翼保育園と三軒茶屋えほん保育園(こちらは改善済み)にありました。

保育士の配置不足

必要な時間帯に保育士、特に常勤の保育士が配置されていなかったケースです。RISSHO KID’Sきらり玉川や玉川保育園はすでに改善されていますが、ねいろ保育園では常勤保育士が配置されていない時間帯や、職員1人だけで保育している時間帯があり、これは未改善のままという記載でした。

児童一人ひとりを尊重した保育ができていない

これも「ねいろ保育園」への指摘で、未改善となっています。具体的な内容までは分かりませんが、保育の質そのものに関わる、見過ごせない指摘だと感じます。

事故が起きても区へ報告していなかった

ぽこころ保育園祖師谷では、事故が発生した際に区へ報告する義務を果たしていなかったという指摘がありました(改善済み)。事故報告は、同じ事故を繰り返さないための仕組みなので、ここが機能していないと再発防止につながりません。

健康管理まわりの指摘

健康診断が実施されていない、回数が足りない

こもれび保育園上野毛園、グリーンヒル奥沢保育園の分園であるグリーンバレー等々力保育園(こちらは現在も改善中)、ねいろ保育園などで指摘がありました。年2回の健診が保育所には義務付けられていますが、これが守られていないケースです。

検便を確認しないまま調理・調乳業務に従事

これが件数としてはかなり多い印象です。Gakkenほいくえん砧、RISSHO KID’Sきらり岡本、グリーンフィールド上野毛保育園、せたがやこころ保育園、三茶こだま保育園、代沢ききょう保育園、尾山台保育園、マリア保育園、ねいろ保育園など、多くの園で指摘されていました。いずれも改善済みです。食中毒予防の基本ルールなので、なぜここまで多いのか少し気になるところです。

衛生管理・保育スペースの不備

チャイルドスクエアそしがや(建物設備)、下馬鳩ぽっぽ保育園(調乳室)、代沢みこころ保育園分園 小さな森の保育園(基準面積不足)といった指摘がありました。いずれも改善済みです。

防災・安全計画に関する指摘

こちらも件数が多いカテゴリです。

  • 消火訓練の未実施:ChaChaChildren Soshigayakoen、グリーンフィールド上野毛保育園、高木保育園、生活クラブ保育園ぽむ・砧、早苗保育園(本園・分園)、日本大学認定こども園、尾山台保育園、せたがやこころ保育園(こちらは改善中)
  • 避難訓練の未実施:三軒茶屋わこう保育園、東玉川善隣保育園、風の丘めぐみ保育園(森棟・風棟)
  • 防災計画そのものが未作成:グリーンヒル奥沢保育園、ナオミ保育園(本園と分園2件)
  • 安全計画が保護者に周知されていない:グリーンヒル奥沢保育園とその分園、下北沢そらいろ保育園、駒沢わこう保育園、三軒茶屋わこう保育園
  • 施設長が運営管理業務に専従していない日があった:にじいろ保育園給田、空の鳥保育園、三茶こだま保育園、世田谷おとぎの森保育園

訓練の未実施自体は「今月やっていなかった」というレベルの指摘が多いですが、積み重なると本番でいざという時に動けない、という話につながるので軽視はできません。

会計・運営管理に関する指摘

ここは直接的な安全リスクというより、法人としての適正な運営体制に関わる話です。運営に携わっていた立場からすると、ここもきちんと見ておきたいポイントです。

  • 会計書類の不備・誤り:えにっくす八幡山保育園、にじいろ保育園給田・松原・千歳台、ふかさわミル保育園、三軒茶屋えほん保育園、日本女子体育大学附属保育園、ぽこころ保育園祖師谷
  • 委託費や積立資産が本部で一括管理され、園ごとに分けて管理されていない:にじいろ保育園給田・松原・千歳台、ぽこころ保育園祖師谷
  • 資金残高・貸付金・繰入金に関する不備:いいほいくえん用賀、モニカ三軒茶屋園(貸付金の未補填)、つくし保育園・等々力保育園・日本女子体育大学附属保育園(資金の取崩しや充当処理)、ミアヘルサ保育園ひびき上馬・桜すくすく保育園(資金残高が基準超過)、にじいろ保育園松原(繰入金の目的が不明示)
  • その他の会計上の不備:上北沢こぐま保育園(積立資産の計上誤り)、等々力保育園(預金管理の内部牽制不足)

読んでみて感じたこと

件数だけ見ると「消火訓練未実施」や「検便確認漏れ」のような手続き的な指摘が目立ちますが、注目すべきはやはり未改善のまま残っている指摘です。特に「ねいろ保育園」のように、職員配置と保育の質そのものに関わる指摘が未改善で残っているケースは、保護者としても運営に携わる立場としても、その後どうなったのか継続して見ていきたいところです。

行政の監査結果は淡々とした表現で書かれていますが、一つひとつの指摘の背景には、日々の忙しい現場の実情があるはずです。今後もこうした情報はチェックして、当サイトでも取り上げていきたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました