子どもを託す、ということには、どんな想いが宿っているのでしょう。
それは、今日一日、どうかこの小さな命を、やさしく、あたたかく、そして安全に包んでほしいという、祈るような信頼です。
2022年6月から10月にかけて、横浜市が株式会社グローバルキッズの27の保育園を対象に行った指導監査で、いくつかの深刻な指摘がありました。中でも、下田町園における勤務記録の虚偽と職員配置の不備は、子どもを預ける保護者の立場からすると、見過ごせない問題です。
この出来事を通して、私たちは何を見つめ直し、どう子どもの日々を守っていくべきか──。
今日は、保育園を探しているお父さんお母さんへ、そして、転職を考えている保育士さんへ、小さな光となるようなお話を、静かにお届けできたらと思います。
この文章からわかること
- 下田町園で指摘された「勤務記録の虚偽」と「配置基準未達成」の背景
- なぜ正しい勤務管理が子どもにとって重要なのか
- 本来の保育園とはどんな場所であるべきか
- 保育園を選ぶときに、保護者がそっと意識しておきたいこと
- 転職活動中の保育士が自分の「働く幸せ」を見つけるための視点
保育の現場で起きたこと
2022年のある日、横浜市が実施した指導監査で、株式会社グローバルキッズが運営する保育園にいくつかの改善指摘がありました。
とりわけ下田町園では、平成31年4月の勤務状況において「虚偽の内容の書類を提出していた」とされました。保育士の出勤時間や人数を、本来とは異なる形で記録し、実態と違う勤務状況を報告していたのです。
また、職員の配置も、認可基準を満たさない日が複数あり、子どもに必要な保育の人員が足りていなかった可能性があるといいます。
そのうえ、職員の出退勤時間が実際とは異なって記録されていた日もあり、保育の根幹を支える「人」の存在が、曖昧にされたまま、保育の時間が流れていたことになります。
これらは「数字の問題」ではありません。誰がどんな思いでそこに立ち、どんな心で子どもを迎えたのか──保育は、日々のあたたかな関わりの積み重ねです。その土台に曖昧さや虚偽があれば、安心も信頼も、そっと崩れてしまうのです。
どうしてそれが大切なのか
保育園で働く保育士が、その日のはじまりに、ほんとうにその場所に立っていたのか。子どもたちのそばに、いつも決まった保育士がいたのか。
それを「書類」で証明することが目的ではありません。
重要なのは、その日、その時間、その小さな命のそばに、信頼できる大人がいたということ。それは、「命を守る」ことと同じくらいの重みを持っています。
職員の配置基準は、ただの制度ではありません。一人の保育士が見られる子どもの数には、限りがあります。子どもが転んだとき、泣いたとき、怒ったとき、そばにいる大人が気づき、抱きしめてくれるかどうか。それは人数のバランスにかかっているのです。
もし基準を満たさず、職員の記録もあいまいなら、そこには「子どもが見えていない時間」が生まれてしまう。保護者にとって、それは何よりも恐ろしいことです。
保育園とは、どんな場所であってほしいか
私はよく、「保育園とは、もう一つの家庭であるべきだ」と思います。
それは、ただ安全なだけの場所ではありません。家庭のように、あたたかく、丁寧で、正直な場所。嘘をつかず、誰かを置き去りにせず、目の前の子どもをしっかりと抱きしめるような、そんな誠実な空間であってほしいのです。
保育とは、「子どもに関わるすべての行動」のことです。声のかけ方、目線の高さ、おむつを替える手つき、給食を配るときのまなざし──そこに、思いやりと愛情があるか。
そうした丁寧さの一つひとつが、子どもに「この世界はあたたかい」と教えてくれる。だからこそ、保育園という場所には、何よりもまず「信頼」が必要なのです。
保育園を選ぶお父さんお母さんへ
園の見学に行ったとき、園庭や教室を見るのはもちろん大切ですが、ぜひ次のことを心にとめてみてください。
- 保育士さんは、子どもにどう声をかけているでしょうか。
- 園長先生は、保育士に信頼されているように見えますか。
- 日々の記録や連絡帳は、丁寧に書かれていますか。
- 子どもたちは、どんな顔で過ごしているでしょうか。
そして何より、「なんだか、ここなら大丈夫だ」と、あなたの心が静かにうなずくかどうか。それが一番大切な判断軸です。
働く保育士さんへ
転職を考えるとき、条件や給与に目がいきがちです。でも、どうか一度、次の問いを自分に投げかけてみてください。
「私は、どんな場所で働きたいだろう?」
「私は、どんな人たちと子どもに向き合いたいだろう?」
いい保育園には、やさしい空気が流れています。チームで声をかけ合い、困ったときに助け合える職場。それは、あなた自身の人生の安心にもつながる場所です。
見学の際は、こんな点に注目してみてください。
- 保育士の人数は十分に足りていますか。
- 残業や持ち帰り仕事について正直に教えてくれますか。
- 保育の方針や理念が、あなたの保育観と響き合いますか。
- 園長先生は、職員に寄り添う姿勢がありますか。
あなたが大切にしたい「保育の心」を、きちんと尊重してくれる場所。それが、ほんとうに働く価値のある保育園です。
最後に──すべての保育に関わる人へ
保育の現場は、いつも静かな尊さで満ちています。
泣いている子どもに、小さく「大丈夫だよ」と声をかける。
転んだ子に、そっと絆創膏を貼る。
お昼寝の布団を丁寧に敷いて、背中をやさしく撫でる。
それらはすべて、「生きていていいんだよ」と子どもに伝える日々の手紙のようなもの。
保護者の皆さん。今日も、子どもを育てるという果てしない営みを、どうか誇りに思ってください。朝、泣きながら園に向かった子が、夕方、笑って手を振ってくれる姿に、あなたのすべての努力が宿っています。
保育士の皆さん。あなたの一言が、一つの抱っこが、一人の子どもの心を温めています。その仕事は、何よりも意味があり、何よりも大切です。
どうか、誇りをもって、やさしく、正直に、そして丁寧に──これからの保育の時間を、積み重ねていってください。
そのすべてが、子どもたちの未来を、あたたかく照らしてくれるのです。
<参考>横浜市 指導監査結果https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kosodate/ninka/kanendokekka.html
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