私たちが子どもを預けるときに、何よりも大切にしたいのは「安心感」です。
それは施設の綺麗さや、先生たちの笑顔といった“目に見える安心”だけではありません。
本当に必要なのは、見えないところまで行き届いた心配りです。
2024年7月18日、世田谷区のスマイルキッズドレミファ保育園で行われた指導監査において、「安全計画の保護者への周知がなかった」という指摘がありました。
一見、小さな見落としにも思えるこの出来事から、私たちは何を感じ、どう学ぶことができるのでしょうか。
保護者にも、保育士を目指す方にも、やさしく寄り添うように、丁寧にお伝えしたいと思います。
この記事でわかること
- 指導監査で指摘された「安全計画の周知不足」とは何か
- なぜそれが大切なのか、本来どうあるべきだったのか
- 保育士が園選びをする際に注目すべき“見えにくいポイント”
- 保護者と保育士、立場を超えて支え合う関係のつくり方
1. 小さな指摘、大きな意味
指導監査というのは、保育園が適切に運営されているかを確認する、いわば健康診断のようなものです。
その中で、「安全計画の保護者への周知がなかった」という指摘は、一見するとささいなミスに思えるかもしれません。
でも、実はこの一文には、大切な視点が含まれています。
たとえば、地震や火事といった非常事態。
そんなとき、保護者は「うちの子は大丈夫だろうか」と胸を締めつけられる思いで、園に連絡を入れるでしょう。
けれど、事前に「こんなときにはこうしますよ」という情報が伝えられていれば、きっとその不安は少しだけ軽くなるはずです。
つまり「安全計画」とは、園がいざというときにどう動くのか、保護者と共有し、安心の土台を築くもの。
それが伝えられていなかったということは、その安心の土台が少しぐらついていたということなのです。
2. どうして伝えられなかったのか――背景を想う
現場の先生たちは、決して手を抜いていたわけではないと思います。
むしろ、毎日めいっぱい子どもたちと向き合い、笑顔や泣き声に包まれながら、走り回るように仕事をしていたことでしょう。
その中で、事務的な部分、書類の説明や配布が後回しになってしまったのかもしれません。
とくに、安全計画というのは、年に1回見直すもの。内容が変わらない年には、つい報告のタイミングを逃してしまうこともあるでしょう。
ですが、どんなに忙しくても、保護者との信頼関係を保つためには、こうした“報告”が不可欠です。
保育とは、子どもを真ん中に、家庭と園が手を取り合って育てていく営みだからです。
3. 本来あるべき保育とは
保育の本質とは、「子どもが安全で、安心して過ごせる場」をつくること。
それは、日々のあいさつや絵本の読み聞かせのような温かな時間だけではありません。
非常時への備え、避難訓練、職員の役割分担、連絡体制……そうした裏方の準備があるからこそ、日常が守られます。
そして、それを保護者にも「見える形で」共有することで、園と家庭が同じ方向を向けるのです。
紙1枚の配布かもしれません。でも、その1枚に「園はあなたの大切な子どもを守る準備をしていますよ」というメッセージが込められています。
4. 保育士が転職する際に見ておきたい「園の姿勢」
これから保育士として働こうとする人、または転職を考える人にも、この出来事は一つのヒントをくれます。
それは、「その園は、どこまで保護者と向き合っているか?」という視点です。
求人票には、園の理念や給与、勤務時間といった情報は載っています。
でも、「安全計画の共有の有無」や「情報の伝達体制」までは書かれていません。
だからこそ、見学や面接のときに、こんな質問をしてみるのもいいでしょう。
- 保護者との連絡手段はどのようにしていますか?
- 緊急時のマニュアルはありますか?
- 職員会議で保護者対応の共有はありますか?
そうした質問に対して、丁寧に答えてくれる園こそ、安心して働ける場所かもしれません。
保育士自身が「安心して働ける園」であれば、その安心は子どもたちにも自然と伝わります。
5. 保育を支える、すべての人にエールを
保育の世界は、華やかに見えて、その実、地道な積み重ねの連続です。
書類を揃えること、会議で情報を共有すること、保護者に説明すること。
ひとつひとつは小さくても、どれも子どもたちの未来に繋がっています。
今回の指摘は、たしかに改善すべきことでした。
でもそれは、努力の結果を否定するものではなく、「もっとよくなるためのヒント」なのだと思います。
保護者も、保育士も、みんな日々精一杯に生きています。
「ちゃんとやらなきゃ」と自分を責めるより、「もう一歩、ていねいにやってみよう」と思えたなら、それで十分です。
まとめ:見えない安心を、みんなで育てよう
安全計画は、保育園の運営においては基本的な項目のひとつです。
でも、それを「伝える」「共有する」ことの大切さに気づくことで、保育の質は一段深まります。
子どもたちにとっての安心、保護者にとっての信頼、そして保育士にとっての誇り。
それは、ほんの小さな行動から生まれるものです。
私たちは、いま目の前にいる子どもたちの未来を預かっています。
だからこそ、見えない部分こそていねいに――。
そうやって積み重ねた保育は、必ず誰かの心を支える力になります。
<参考>世田谷区 指導検査について
https://www.city.setagaya.lg.jp/01044/1632.html#p4
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