積み上げたものの意味をもう一度──ポピンズナーサリースクール羽根木の指摘から考える、保育のこれから

監査 世田谷区
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保育園は、子どもたちの育ちの場所であると同時に、
保護者の人生を支える舞台でもあり、保育士にとっての職場、人生の一部でもあります。

そんな保育園で、ひとつの小さな誤りが報告されました。
令和6年8月8日、世田谷区のポピンズナーサリースクール羽根木において、
「積立資産の目的外使用の処理に誤りがあった」と、行政から指摘を受けたのです。

会計の数字は、無機質なようでいて、保育の質そのものに深く関わっています。
この記事では、その誤りがどのような背景から生まれたのか、
保護者として、あるいは保育士として、どんな視点を持てばよいのかを
ていねいに紐解いてみたいと思います。


この記事でわかること

  • 積立資産の目的外使用とはどういうことか
  • 指摘を受けた背景と、そこから見える保育園経営の難しさ
  • 保育園選びで見落とされがちな「財務的健全性」という視点
  • 転職活動中の保育士が見極めるべき園の“本当の姿”
  • それでもなお、子どもたちの未来を信じ、保育を支え続ける人たちの話

小さな誤り、大きな意味

積立資産の目的外使用。

この言葉だけを聞いても、いまいちピンとこない方も多いかもしれません。
それもそのはず。これは「本来、子どもたちのために使うべきお金が、違う用途に使われていた」
ということを示しています。

たとえば、保育園が将来の修繕費や備品購入のためにコツコツ積み立てていたお金を、
別の費目に流用してしまった。しかも、その会計処理にミスがあった。
それが今回の指摘の主旨です。

「それってそんなに大きな問題なの?」と感じる方もいるかもしれません。
けれど、こうしたミスが生むのは、単に帳簿上の混乱だけではないのです。


保育園という“信頼”を預かる場所

保育園という場所は、何よりも「信頼」が柱です。

子どもを託す保護者。
命を預かる保育士。
それらを支える園の経営者。

この三者の信頼関係がきちんと結ばれていないと、どんなに見た目が立派な園であっても、
その中身は、少しずつ歪んでいきます。

今回のケースでは、積立金という“未来への備え”が、別の使い方をされてしまった。
これは、保護者にとっては「大切なお金が子どもたちのために使われなかったのでは?」という不安につながります。
そして、保育士にとっても「経営に無理があるのではないか」「環境整備が後回しになってしまうのでは」という疑念が生まれます。


なぜ、このような誤りが起きるのか?

保育園の経営は、決して楽なものではありません。
国や自治体の補助金に頼りつつ、運営費・人件費・設備費などをやりくりしていく。
そのうえで、子どもたちに良い保育を届けるには、時にギリギリの綱渡りをすることもあるのです。

だからといって、目的外使用が許されるわけではありません。

むしろ、そこに「どんな理由があったのか」「どうして防げなかったのか」を明らかにし、
改善していく姿勢こそが、園に求められる“誠実さ”です。

行政の監査は、こうした姿勢を正すための大切な機会です。
指摘されたことは決して終わりではなく、信頼を取り戻すための第一歩なのです。


保護者が保育園を選ぶときに見るべき“もうひとつの視点”

多くの保護者は、保育園選びの際にこうしたことまでは見ません。
当然です。園庭があるか、給食が美味しいか、先生たちの雰囲気はどうか。
そういう“目に見える安心感”を求めて、園を選ぶのは自然なことです。

でも、だからこそ、もうひとつの視点をそっと心の片隅に置いておいてほしいのです。

それが、「園の財務状況と経営体制」。

「監査結果を公開しているか」
「過去に指摘事項があったか」
「それに対してどう対応したか」
「積立金の使い方が明確か」
「保育士の定着率が高いか」

こうしたことは、園の“見えない顔”を映し出します。
ポピンズナーサリースクール羽根木のように、知名度の高い園であっても、
人知れず誤りを犯すことがあるのです。


転職を考える保育士さんへ──見るべきは“数字の裏にある心”

転職活動中の保育士の方にとっても、このニュースは他人事ではありません。

待遇や園舎の美しさに惹かれることもあるでしょう。
でも、保育士として長く安心して働くには、
「この園の経営は誠実か」「ミスにどう向き合っているか」を見ることが何よりも大切です。

実は、良い園とは「完璧な園」ではありません。
大切なのは「問題をどう受け止め、改善していくか」に向き合っているかどうか。
つまり、“弱さを隠さない強さ”を持っている園こそが、働く場所としてふさわしいのです。

監査結果や経営情報に目を通すことは、自分の未来を守る行為です。
どうか、自分の働く場所を“心から好きになれる園”にしてください。


子どもたちのために、いま何ができるのか

積立資産の目的外使用という、小さな数字のズレ。
けれど、そこから見えてくるのは、保育を支える構造の脆さと、誠実さの大切さです。

私たちは皆、間違えることがあります。
でも、それを認め、正し、伝える努力こそが、信頼を育てるのだと思います。

保育士さんは日々、子どもたちのために、全力で走っています。
保護者もまた、働きながら、子どもを育てています。
そんな毎日の中で、誰もが心配を抱えながら、それでも前を向いて生きている。

だからこそ、私たち大人が守るべきものは、「誠実さ」です。
どんなに忙しくても、どんなに余裕がなくても、「子どもたちのために使うはずだったもの」を、
きちんとそのために使う。
その約束を守ることが、保育に関わるすべての人の使命です。


おわりに──ほんとうの“積み立て”とは

積立金とは、ただの数字ではありません。
それは、子どもたちの未来を見つめる「まなざし」の積み重ねです。

誤りがあったのなら、それを認め、向き合い、信頼を取り戻す。
そのプロセスこそが、ほんとうの“保育の質”を作るのです。

保護者の皆さんへ。どうか、園を選ぶときに「誠実さ」という基準を忘れずに。
保育士の皆さんへ。どうか、「信じられる場所」で、子どもたちと向き合ってください。

保育園は、社会の希望です。
そして、皆さんの目の前にいる子どもたちは、未来そのものです。
そのために、私たちは今日も、誠実に、生きていきましょう。


<参考>世田谷区 指導検査について
https://www.city.setagaya.lg.jp/01044/1632.html#p4

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