「火の用心は、心の用心。」――保育の現場における“消火訓練”の本当の意味–世田谷区のナオミ保育園〈分園〉りんごの木

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保育園を探すとき、目に見えるものばかりに気を取られてしまいがちです。園庭の広さ、先生の笑顔、壁に飾られた子どもたちの作品…。けれど、本当に大切なことは目には見えない部分に宿っているのかもしれません。たとえば「消火訓練」。
令和6年10月22日、世田谷区のナオミ保育園〈分園〉りんごの木において、指導監査の中で「消火訓練が未実施の月があった」という指摘がされました。
これはただの「うっかりミス」だったのでしょうか。それとも、保育の現場が抱える見えない課題なのでしょうか。
保護者として、そして保育士として、「安心して子どもを預ける」「安心して子どもと向き合う」ために、今一度足を止めて、考えてみたいと思います。


この記事でわかること

  • なぜ「消火訓練」が保育の現場で必要なのか
  • 消火訓練未実施の背景にある、現場のリアルな状況
  • 保育園選びで見るべき“保育の本質”
  • 転職活動中の保育士が確認したい園のチェックポイント
  • 子育て中の保護者と保育士、どちらにも必要な「心のゆとり」の話

■「訓練」という言葉の重み

「消火訓練」と聞くと、どこか形式的で、学校や職場での年中行事のような印象を持つかもしれません。しかし、保育園におけるそれは、決して“形だけ”のものではありません。
なぜなら、保育園とは“命を預かる場所”だからです。

小さな子どもたちは、自ら危険を察知し、逃げることができません。だからこそ、保育士が迅速かつ冷静に判断し、行動しなければならない。そのためには、訓練が欠かせないのです。
訓練とは「心と体にしみこませる」こと。その場にいないときでも、自然と体が動くようにするための準備です。

■消火訓練が「未実施」だったということ

令和6年10月22日の指導監査にて、ナオミ保育園〈分園〉りんごの木では「消火訓練が未実施の月があった」と指摘を受けました。
これは単に書類の不備という話ではありません。おそらく現場では「他の緊急事態が重なった」「体制が一時的に整わなかった」など、さまざまな事情があったのでしょう。

保育の現場は、ときに想像を超える忙しさです。欠員が出ればカバーが必要になり、季節の行事や日常保育、書類対応など、日々が目まぐるしく過ぎていきます。
その中で、ひと月だけ訓練が抜け落ちてしまった。その“たった一度”を重く見るべきか、それとも“他の月はきちんとやっていた”ことに目を向けるべきか。

もちろん、どちらも大切です。
でも、ここで大事なのは「なぜ実施できなかったか」を見つめ、そのうえで「次にどうするか」を考えること。子どもを育てることと、どこか似ています。

■理想の保育とは、「失敗を許す力」でもある

保育に完璧を求めるのは簡単です。けれど、それは同時に、現場の保育士たちを追い詰めることにもつながります。

たとえば消火訓練ができなかった月があるとしたら、それを叱る前に、こう問いかけてみたいのです。
「どんな日々を過ごしていたのですか?」と。
「子どもたちは元気でしたか?」「先生たちは笑っていましたか?」と。

失敗を責めるよりも、どうしてそうなったかを知り、次にどう生かすかを共に考える姿勢こそが、本当の意味での“保育の安全”を育むのではないでしょうか。

■保護者の視点:保育園選びで見るべき「安心の形」

保育園選びで多くの保護者が気にするのは、アクセスや設備、定員数など。もちろん、それも大切なポイントです。
でも、それに加えて見てほしいのが「非常時への備え」。
消火訓練や避難訓練、防災備品の確認など、普段は目立たないけれど、非常時に“命を守る力”がそこにはあります。

面談のとき、園にこんな質問をしてみてください。

  • 最近行われた避難訓練の内容は?
  • 保育士はどのように役割分担をしていますか?
  • 子どもが怖がったとき、どうフォローしていますか?

その答えの中に、園の本気度が見えてくるはずです。

■保育士の視点:転職先で大切にしたい“空気感”

転職活動中の保育士さんにとって、園選びは人生の転機にもなりうるもの。
そのときに大切なのは、「この園は、現場を大切にしているか?」という視点です。

たとえば、

  • 定期的に訓練を行っているか(形式的でなく、意義を共有しているか)
  • 失敗に対して責めるのではなく、学びの機会として捉える姿勢があるか
  • 保育士同士が助け合える関係性があるか
  • 園長が現場に立ち、声を聴いているか

これらは、目に見えにくいけれど働きやすさを左右する大切な要素です。

■「やり直しができる」保育園でありたい

私たちは、完璧を目指しながらも、時に抜けや過ちをしてしまいます。
でも、大事なのは「間違いを許し、学び直せる場所」であること。

ナオミ保育園〈分園〉りんごの木のこの指摘も、きっとこれからの保育に活かされるはずです。
なぜなら、指摘は「責め」ではなく「伸びしろ」だから。

子どもたちもそうです。失敗から学び、成長していきます。
私たち大人も、同じであっていいはずです。


まとめ:見えないところを、信じてみる

消火訓練という小さなできごとから、見えてくる大きな問い。
「本当に安心して子どもを預けられる場所とは?」
「本当に大切に働ける職場とは?」

その答えは、派手な設備や美しい園舎の中ではなく、日々の丁寧な積み重ねと、失敗を受け止められるあたたかさの中にあるのだと思います。

保護者も、保育士も、みんなが安心して子どもたちに向き合える社会でありますように。
そのために、今日も誰かが、静かに火の用心の心を持ち続けています。

<参考>世田谷区 指導検査について
https://www.city.setagaya.lg.jp/01044/1632.html#p4


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