毎日を忙しく生きる私たちにとって、子どもを預けるということは、大きな信頼を託すことでもあります。けれどその信頼が、知らぬ間に小さく揺らいでしまうことがあるのです。令和6年12月、世田谷区の保育園で起きた出来事は、その揺らぎの輪郭をそっと私たちに教えてくれました。これは、保育園の過ちを責めるのではなく、未来のためにやさしさを見つけ直すお話です。
この記事でわかること
- 衛生的な調乳がなぜ大切か
- 会計処理が保育の信頼にどう関係するのか
- 子どもにとって「やさしい保育」とはどんなものか
- 保育士として転職する際に見ておきたい園の姿勢
■ ふつうの朝、ふつうの調乳。でも、そこにある違和感
保育の現場には、日々のたくさんの「ふつう」があります。
朝の会、散歩、給食。そして、赤ちゃんのためのミルク。
今回の指摘でまず挙げられたのは、「調乳が衛生的ではない場所で行われていた」というものでした。
例えば、掃除道具の近く。人の出入りが多い場所。そんなところで、赤ちゃんの口に入るものをつくるのは、ほんの少しの違和感かもしれません。でもその「少し」は、子どもの体にとって、大きな負担になることもあるのです。
保育というのは、そういう小さなことを「小さくないこと」として丁寧に扱う営みだと思います。
安全で、清潔で、心がこもっているか。調乳室は、ミルクだけでなく、大人の心持ちも映し出す場所なのです。
■ お金の使い道は、子どもへの思いやりのかたち
次に指摘されたのが、「法令上適正でない会計事務処理」。
少し難しい言葉ですが、要は、お金の扱い方が正しくなかったということです。
でもこれは、単に経理の話ではありません。
保育園の運営には、教材費、遊具、行事の準備、職員のお給料など、多くの「子どものため」の出費があります。その一つひとつは、目に見えるやさしさです。だからこそ、会計の不備は、やさしさの不在に見えることがあります。
帳簿は、信頼の鏡。
保護者にとっても、保育士にとっても、安心して関われる園であるためには、「ちゃんと使われているか」が見えることが、とても大事なのです。
■ 子どもの時間を、ていねいに包むということ
本来の保育とは、ていねいさの積み重ねです。
ていねいに調乳する。ていねいに声をかける。ていねいに帳簿をつける。
そのひとつひとつが、子どもの今日をつくり、未来を育てていくのだと思います。
大切なのは、「誰かに見られているから」ではなく、「誰も見ていなくても」ていねいであれるかどうか。
そんな保育園で育った子どもは、やさしく、まっすぐに大きくなるのだと思います。
転職を考える保育士さんへ──園を選ぶときに大切なこと
もし今、保育士として新しい園を探している方がいたら。
履歴書や求人票だけでは見えない「やさしさ」を、少し立ち止まって探してみてください。
● 見てほしいのは「空気」
- 園内の空気が静かすぎないか、ピリピリしていないか
- 調乳室やオムツ交換の場が清潔で、整っているか
- 子どもたちの声に、大人がどう応えているか
● 聞いてみたいのは「なぜ、ここで保育をしているのですか?」
- 園長先生や主任の話に、愛があるかどうか
- 保育観がしっかりしていて、職員がそれを大事にしているか
- 「効率」や「回転」より、「子ども」を主語にして話しているか
あなたが「ここで働きたい」と思える園は、きっと、子どもにとっても「ここで過ごしたい」と思える場所です。
まとめ──やさしさの輪を、またひとつつなぐために
保育園での指摘事項は、決して他人事ではありません。
けれど私たちは、誰かを責めるよりも、そこから何を学ぶかに目を向けていきたいと思います。
保護者も、保育士も、子どもたちも、日々を一生懸命に生きています。だからこそ、安心して託せる場所、安心して働ける場所が必要です。やさしさとは、派手なことではなく、ていねいな日常の積み重ね。
調乳室の片隅や、ひとつの帳簿の行間に、そうしたやさしさが込められている。
そう信じて、今日も小さな一歩を重ねていきましょう。
<参考>世田谷区 指導検査について
https://www.city.setagaya.lg.jp/01044/1632.html#p4
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