「やさしさは、透明であること──さいたま市桜花保育園の指導監査から学ぶ、ほんとうの信頼」

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保育園を探すとき、私たちは見えないものを信じようとします。先生たちのあたたかさ、子どもたちの笑顔、毎日の積み重ね。それらが心にふれると、「きっとここなら大丈夫」と思えるのです。でも、本当に大切な信頼は、数字の中にも隠れています。
今回は、さいたま市大宮区の桜花保育園に対して行われた指導監査の指摘から、保護者として知っておきたい「保育園の経営の透明さ」について考えてみます。そして、転職を考える保育士さんに向けて、園を選ぶうえで見逃せないポイントもお伝えします。


  • 桜花保育園での指導監査における具体的な指摘内容
  • 保育園の経営において「予算」や「収支の記録」が意味するもの
  • 保護者として確認したい、信頼できる園の特徴
  • 保育士として、園を選ぶときに大切にしたい視点

「指摘」ということばの向こう側

2023年12月20日、さいたま市による桜花保育園の指導監査で、いくつかの改善事項が指摘されました。
指摘事項は以下の三つです。

  1. 年度途中において執行額との乖離が見込まれる場合は、補正予算を作成してください。
  2. 計算書類に計上されていない収入がありますので、適正に処理してください。(過年度・当年度分職員給食代)
  3. 貸借対照表と国庫補助金等特別積立金明細書の計上額が相違しています。原因を究明し適切に修正してください。

これらは一見すると、どこか堅苦しいお役所言葉に見えるかもしれません。ですが、子どもたちの命と未来を預かる保育園だからこそ、数字のひとつひとつに「誠実さ」が求められるのです。

なぜ補正予算が必要なのか?

保育園は、多くの場合「年度始め」に予算を立てて運営をスタートします。ところが、実際には急な物価の変動や職員の入退職、補助金の増減など、さまざまな理由で「予定通りにいかないこと」があります。

そんなとき、本来であれば「補正予算」というかたちで、修正した収支計画を作りなおす必要があります。それがなかった、というのが1つ目の指摘です。

たとえば、もし家計簿で「食費は月2万円」と決めていても、実際には毎月2万5千円かかっていたら、何かを見直す必要がありますよね。園の予算も同じです。透明であることは、よりよい保育を届けるための第一歩なのです。

見落とされた収入──職員の給食代

2つ目の指摘は、過去に職員から徴収した「給食代」が収入として計上されていなかった、というものです。

これは、単純な計算のミスか、あるいは記帳のルールを知らずに放置されてしまったのかもしれません。しかし、帳簿に載っていない収入があるということは、会計上「不透明な部分がある」という印象につながります。

お金の流れが見えるということは、その保育園が「どこに何を使っているか」を誰に対しても説明できる状態にあるということ。そこには、子どもたちの未来への責任が込められているのです。

積立金と貸借対照表のズレ

最後の指摘は、貸借対照表と補助金の積立金明細書の数字が合っていなかったという点です。これは、「帳簿上のズレ」であり、決算を読むうえでは致命的なミスとも言えます。

こうしたズレがある場合、その園が資金を適正に管理しているかどうか、判断が難しくなります。逆に言えば、こうした「ズレ」を発見し、修正しようとする行政の働きがあることは、保護者にとって心強いことでもあります。


保護者が知っておきたい「信頼できる園」の見分け方

では、私たち保護者は保育園選びで何を大切にすればいいのでしょうか。

  • 園の見学時に、職員の雰囲気や子どもの様子だけでなく、施設の整備状況や掲示されている情報(年間計画、職員体制など)も確認しましょう。
  • できれば運営法人のホームページで、決算書や運営方針が公表されているかを見てみましょう。
  • 指導監査の記録が閲覧可能な自治体のサイトもあります。興味があれば、チェックしてみるのも安心材料の一つです。

保育園を選ぶというのは、「ここに子どもの未来を託せるか?」という問いです。そして、その答えの中には、目に見えない「信頼」という土台が必要なのです。


転職を考える保育士さんへ──園選びの視点

保育士として転職を考えるとき、もちろん給与や勤務条件は大切です。ですが、「安心して働ける園かどうか」を見極めることは、それ以上に重要かもしれません。

  • 会議や園内研修の内容が共有されているか
  • 園長やリーダーの「説明責任」の感覚
  • お金の流れに透明性があるか(職員への説明があるか)

職場における「説明のある環境」は、あなたの努力を支える基盤になります。そして、心をこめて子どもに向き合える余白をつくってくれます。


まとめ──小さな誠実さの積み重ねが、子どもたちの未来を照らす

今回の指導監査を通して見えてきたのは、「書類の不備」や「数字のズレ」の裏にある、保育という仕事の繊細さでした。

けれど、それと同時に、改善を促し、変わろうとする力もまた、そこにあります。
保護者も、保育士も、そして子どもたちも、安心して毎日を過ごせるように。
そのために必要なのは、誠実なまなざしと、小さな気づきを見逃さない手ざわりなのだと思います。

保育園は、社会の中でいちばんやさしく、いちばん未来を信じている場所です。
だからこそ、やさしさには、透明であってほしいと願うのです。


<参考>さいたま市 児童福祉施設等に係る一般指導監査の実施結果

児童福祉施設等に係る一般指導監査の実施結果について
児童福祉施設等に係る一般指導監査の実施結果を公表します。

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