子どもたちが毎日を過ごす保育園。そこで働く保育士の姿や、保育のあり方は、子育てにおける安心と直結しています。2024年9月20日、町田市立町田保育園で行われた指導監査において、「常勤の保育士が各組やグループに1名以上配置されていない」という指摘がありました。保育園を探す保護者の方や、転職を考える保育士の方にとって、これはどのような意味を持つのでしょうか。保育とは何か、人の手で育てるということは何か──この指摘をきっかけに、あらためて共に考えてみたいと思います。
この記事でわかること
- 指摘された「保育士配置の不適正」が意味するもの
- 保育園における「常勤保育士」の役割とは
- 子育て中の保護者が見るべき園選びのポイント
- 転職活動中の保育士が重視すべき視点
- 保育士と保護者を応援する、未来に繋がる言葉たち
保育の「基礎」を守る──配置基準とその背景
保育所には「配置基準」というものがあります。これは子どもの年齢や人数に応じて、必要な保育士の人数が決められているもので、国の定める最低限のラインです。
例えば3歳児なら20人に対して1人、4・5歳児は30人に1人、0〜2歳児はもっと手厚い配置が必要とされています。けれども、単に人数を満たせばいいというものではありません。保育の質を担保するには、経験や専門性を持つ「常勤保育士」の存在が不可欠なのです。
町田市立町田保育園における指摘は、まさにここが問題でした。常勤保育士が、各クラスやグループに1人以上配置されていなかった。この状況では、継続的で深い関わりが必要な保育が、日によって断片的になってしまう恐れがあります。
「常勤」が意味すること──継続する関係性の力
常勤の保育士とは、毎日決まった時間帯で園に勤務し、子どもの成長を長い目で見守る存在です。彼らの役割は、単に子どもを預かることではなく、その子の小さな変化に気づき、家族と共に歩む信頼の架け橋となることです。
たとえば、Aちゃんが最近よく泣くようになった。その背景には、家での生活リズムの変化があるかもしれません。そうした些細な変化を見逃さず、保護者と丁寧に共有し、必要ならば保育の方法を調整していく──それが常勤保育士の仕事です。
このような継続的な関係性は、パートや非常勤の保育士だけでは築きにくい部分でもあります。
保護者の視点──「誰が見てくれるか」ではなく「どう見てくれるか」
保育園選びで最も気になるのは、「うちの子は大丈夫かしら」という安心感です。建物の綺麗さや新しさ、人気の高さももちろん大切ですが、それ以上に大事なのは「どんな大人が、どんなふうに関わってくれるのか」です。
見学のときは、子どもたちの様子だけでなく、保育士の働き方に注目してみてください。
- 毎日、同じ顔ぶれが子どもに寄り添っているか
- 担任保育士は常勤か、非常勤か
- 保育士同士の連携は密か
園の雰囲気が「穏やか」で「安心できる」ものであれば、それは常勤保育士がしっかりと配置され、保育のリズムが安定している証拠かもしれません。
保育士の視点──転職先で見るべきは「配置」と「対話の文化」
保育士として働く場を選ぶとき、園の理念や給料、待遇も大切です。でも、実は見落としがちなのが「配置のされ方」と「職員間の対話の文化」です。
- クラスに常勤が複数いるか
- 担任を任される体制が整っているか
- 休憩がきちんと取れているか
これらは、自分の専門性を活かし、無理なく働き続けるための基盤です。特に園見学の際には、ぜひ「勤務体制のシフト」「連携ミーティングの有無」「研修制度」などを質問してみてください。
また、園長や主任との対話がスムーズにできるかも重要です。悩みを言える、提案を聞いてもらえる。それがあるだけで、保育はぐっと豊かになります。
保育は人で育つ──大人もまた、育ち合う存在
子どもは、人の手で育ちます。けれども、保育士もまた、人によって育てられます。新人保育士が、ベテラン保育士の背中を見て学び、園長の信念に触れて自分の在り方を深めていく。
町田市立町田保育園での指摘が、今後どのように改善されていくかはこれからの課題です。しかし、私たちはこの出来事から、「人を育てる現場で、人を育てる仕組みが求められている」ことを学ぶべきだと思います。
まとめ──安心は仕組みではなく、関係性から生まれる
保育園における「常勤保育士の配置」は、単なる制度上のチェック項目ではありません。それは、子どもと保育士、そして保護者との信頼関係を育むための、大切な土台です。
保護者の方へ──安心して預けられる園を探すとき、「どんな大人が、どのように子どもと関わっているか」を見てください。
保育士の方へ──自分の力を発揮し、育ち合える職場を選ぶために、「働く仲間との関係性」「日々の保育の中での学びの質」に注目してみてください。
保育という仕事に向き合うすべての人へ。子どもたちの未来は、私たち大人の小さな選択にかかっています。その一つひとつが、きっと明日の笑顔に繋がっていくのです。
<参考>町田市 実地指導の結果
https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/ninka-shidou/hoiku.files/jidou2024_1kekka.pdf
コメント