心を託す場所としての保育園を選ぶということ 〜江戸川区ベルカント保育園の監査結果から考える〜

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保育園は、私たちが大切な子どもを託す場所です。だからこそ、ただ預かってくれるだけでなく、安全で、信頼できて、心に寄り添ってくれる場であってほしい。けれど、ときにその期待が裏切られることもあります。令和7年1月、江戸川区で実施されたベルカント保育園の指導監査結果を受け、私たちは今一度、保育という営みの本質について考えてみたいと思います。本記事では、その背景にある課題を解きほぐしながら、保護者として、そして保育士として、園をどう選ぶべきかを丁寧に綴ります。


この記事でわかること

  • ベルカント保育園の指導監査結果の詳細と背景
  • 保育園に求められる本来の在り方とは何か
  • 子育て中の保護者が園を選ぶ際に見るべきポイント
  • 転職を考える保育士が注目すべき職場の条件
  • 困難な中でも日々奮闘する保育士や保護者へのエール

1. 指導監査というものの意味

まず、保育園に対する「指導監査」とは何かをお話ししましょう。これは各自治体が行う定期的なチェックであり、園がきちんと法令やルールに基づいた運営をしているか、安全面や職員体制は整っているか、財務処理に不備はないかなどを確認するものです。

言い換えれば、私たちが安心して子どもを預けられるかどうかを、第三者の目で見極めるための大切な機会です。そして、今回のベルカント保育園の監査では、いくつもの重要な指摘がなされました。


2. 指摘された6つの課題とその意味

① 一部職員に対し労働条件を明示していない
働くうえでの条件をきちんと文書で示すことは、信頼の基本です。これがなされていないということは、職員の立場が不安定である可能性を示しています。保育士が安心して働けなければ、子どもたちに心から向き合うことも難しくなります。

② 建築物及び建築設備等の定期検査報告を行っていない
建物や設備の安全確認は、子どもたちの命に直結する大切な仕事です。それが怠られていたということは、緊急時の対応にも不安が残るということです。

③ 消火訓練を実施していない月がある
火災はいつ起こるか分かりません。定期的な消火訓練は、保育士一人ひとりが「いざ」というときに迷わず子どもを守るための備えです。たった一度の訓練不足が、万が一のときに取り返しのつかない事態を招きます。

④ 安全計画を策定していない
園内での事故やトラブルにどう対応するか、またどう予防するかを定める「安全計画」が未策定という指摘は、運営全体における危機管理意識の欠如を示しています。

⑤ 保育士を常時2名以上配置していない
子どもはひとりひとり異なる存在です。その日その時で必要な支援も異なります。常に複数の目で見守る体制がないことは、安全と心のケアの両方において大きな問題です。

⑥ 計算書類等を作成していない
資金収支計算書や貸借対照表といった財務書類は、園の健全な運営を示す「体温計」のようなものです。これが存在しないということは、園の経営そのものが見えにくく、透明性に欠けるということになります。


3. なぜこうした問題が起こるのか

多くの場合、このような運営上の不備が起こる背景には「人手不足」と「時間のなさ」があります。小規模な園では、園長が事務、保育、経理すべてを担っているところも珍しくありません。制度が複雑で、書類作成に追われる毎日のなかで、つい後回しになってしまう作業があるのも現実です。

けれど、だからといってそれを見逃してよいわけではありません。なぜなら、保育という仕事は、子どもの命と未来を預かるものだからです。


4. 本来の保育とは「信じて待つこと」

松浦弥太郎さんの言葉に、「よい仕事とは、誰かにとっての親切である」という一節があります。保育とはまさにその最たるもの。目に見える成果はなくとも、日々のやさしい声かけ、失敗を叱らず見守るまなざし、小さな成長をともに喜ぶ姿勢──それらの積み重ねこそが、保育の価値であり、親切の本質です。

その親切を成り立たせるためには、職員が安心して働ける環境と、仕組みが必要です。そして、私たち保護者もまた、園を「価格」や「便利さ」だけで選ぶのではなく、「理念」や「人」で選ぶ視点を持つことが大切だと私は思います。


5. 保護者が園を選ぶ際に見るべきポイント

  • 園長先生と保育士の関係性:現場に対話と尊重はあるか
  • 子どもへの声かけ:名前で呼び、否定よりも肯定が多いか
  • 安全管理の意識:避難訓練の頻度や保育室の整理状況
  • 情報公開の姿勢:ホームページに運営情報があるか
  • 保護者との距離感:連絡帳や日々の対話に温度があるか

園見学は「面接」であると同時に「お見合い」です。こちらが託す気持ちと、受け止めてくれる懐の深さがあるか、五感を使って確かめましょう。


6. 転職活動中の保育士に伝えたい園選びの視点

  • 労働条件が明示されているか(雇用契約書の有無)
  • 研修制度やメンター制度があるか(成長を支える仕組み)
  • 職員配置にゆとりがあるか(休憩がとれるか)
  • 園長の理念が明確であるか(どんな保育を目指すのか)
  • 監査結果をオープンにしているか(透明性のある運営)

転職は「次こそは良い園に」と願う再出発のときです。焦らず、自分を大切にしてくれる職場を選んでください。


まとめ 〜保育に関わるすべての人に、敬意をこめて〜

ベルカント保育園での指導監査結果は、多くの人にとってショッキングなものでした。しかし、これは一部の園だけの問題ではなく、制度の隙間や現場の過酷さが生んでいる構造的な問題でもあります。

だからこそ、保護者は「信じて託す」という選択に、目と心を使うべきですし、保育士は「働きやすさとやりがい」を両立できる場を自分の足で見つけてほしいと願います。

最後に、今日も子どもたちのために笑顔を絶やさずがんばる保育士の皆さんへ。あなたの仕事は、社会の未来をつくる尊い営みです。どうか、自分自身の心と身体を大切に。そして保護者の皆さんへ──どうか、園に預けたあとも、子どもの「味方」でありつづけてください。

保育とは、子どもを育てるだけでなく、大人の「やさしさ」を育むものなのですから。


<参考>江戸川区 検査結果
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e047/kosodate/kosodate/kensa/kekka.html

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