「人が育つ場所には、人がいる。」 〜保育士配置と、見えないやさしさの価値〜品川区Gakkenほいくえん 旗の台

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朝、子どもと手をつなぎながら保育園へ向かう道すがら、あなたが願っていることは、きっととてもシンプルなはずです。
「今日もこの子が、安心して過ごせますように」――。
その願いに応えるために、保育の現場には見えないたくさんの工夫と努力があるのです。けれど、その「見えない支え」が崩れかけているとき、どこで、誰がそれに気づけるでしょうか。
今回は、品川区のGakkenほいくえん 旗の台で令和6年12月に指摘された「保育士の適正な配置がなされていない」という監査結果をもとに、保育園の“あたりまえ”とは何かを、いま一度見つめ直してみたいと思います。


この記事でわかること

  • 保育士の「適正な配置」とは何か
  • なぜ配置が崩れると保育の質に影響が出るのか
  • 指導監査で指摘される背景とは
  • 保護者が園選びの際にチェックできるポイント
  • 保育士が転職活動時に確認したい労働環境の見分け方
  • 「頑張っている人」がきちんと報われる園とは

小さな「ズレ」が大きな「不安」になるとき

保育園というのは、子どもたちが長い時間を過ごす場所です。朝から夕方までの生活のほとんどを、保育士と共に過ごします。だからこそ、そこには“安心して過ごせる環境”が、何よりも大切です。

その環境をつくる大前提となるのが、「保育士の適正な配置」です。

これは単なる「人数」ではありません。「子どもの年齢や人数に応じて、必要な保育士を配置する」という法的な基準があり、それを守ってはじめて、保育の安全と質が確保されるのです。

では、Gakkenほいくえん 旗の台では何が起きていたのでしょうか。

監査で明らかになったのは、「基準に満たない時間帯があった」ということ。
たとえば、朝の時間帯や夕方の降園時間帯。保育士の数が足りず、本来なら二人で見るべき時間帯を一人で担っていたり、子どもの人数が一時的に多くなったときにも補助が入っていなかった、という事例があった可能性があります。

この「少しのズレ」が、実は子どもにとっても、保護者にとっても、そして保育士自身にとっても大きな不安につながるのです。

保育の「質」は、誰が守るのか

保育の質を守るには、適正な人員配置が必須です。
国が定める配置基準では、たとえば1歳児は6人につき保育士1人、3歳児は20人につき1人(現場では加配されることが多い)といった決まりがあります。ですが、現実には「ギリギリの人員」でやりくりしている園も少なくありません。

保育士の急な欠勤、シフトミス、採用の遅れ――そうした理由から一時的に人が足りなくなると、保育の現場は一気に慌ただしくなります。

一人の保育士が目を配れる子どもの数には限界があります。特に、排泄や食事、午睡の見守りなど、手がかかる時間帯は注意が必要です。

子どもたちの「困っているサイン」を見逃さないために、保育士が適正に配置されていることは、保護者が思っている以上に重要なのです。

「この園、大丈夫?」保護者ができる見極めポイント

保護者として、保育士の配置状況まで詳しく知るのは難しいもの。ですが、園見学や説明会の場で、次のような点に注目してみてください。

  • 職員紹介が掲示されているか
  • 園長が「人員配置」について明確に答えてくれるか
  • 保育室に大人の目がしっかり届いている印象があるか
  • 子どもたちの様子が落ち着いているか

また、「保育士の入れ替わりが激しくないか」も重要なポイントです。頻繁に職員が変わる園は、内部で何かしらの課題を抱えていることが少なくありません。

転職活動中の保育士さんへ:園選びの目のつけどころ

保育士が転職を考えるとき、「子どもたちと向き合える環境かどうか」はもちろん大切ですが、それ以上に「安心して働けるか」を確認することが、自分を守る鍵になります。

以下のポイントをチェックしてみてください:

  • 配置基準を上回る職員体制か(「余裕のある人員」と言われるかどうか)
  • 有休の取得状況や残業の実態は?
  • 園長・主任の話し方が穏やかか
  • 見学時、保育士の表情が柔らかいか
  • 認可園か、それ以外か(認可園のほうが監査が厳しく、一定の水準が担保されやすい)

また、今回のように指導監査の情報は各自治体のHPで公開されています。過去にどんな指摘がされていたかを見るのも、信頼できる情報源です。

頑張っている人が、報われるために

私たちはどうしても、「保育士は子どもが好きだから頑張れる」と思いがちです。けれども、それは違います。
保育士もまた、働く人間です。休憩も必要ですし、見守ってくれる上司も必要です。声をかけてくれる同僚がいることで、前を向けるのです。

適正な配置がされないまま、孤独に子どもたちと向き合い続けることは、保育士にとっても辛く、危険なことです。

保護者の「ありがとう」が力になることは間違いありません。でも、それだけでは足りないときがある。
だからこそ、制度として、仕組みとして、「頑張っている人がきちんと報われる園」が必要なのです。


まとめ:あなたの目で、耳で、心で選んでください

保育園を選ぶということは、家族の一部を預けるということ。
だからこそ、「人が育つ場所には、人がいるか」を、どうか見てください。

園舎が新しいかどうかより、パンフレットがきれいかどうかより、そこにいる人が、あたたかいか。
子どもに目を合わせてくれているか。
保育士同士が助け合っているか。

それは、ほんの数分の見学でも、あなたの心には伝わるはずです。

そして、もしあなたが保育士なら。
どうか、自分をすり減らさずに済む場所を、選んでください。
あなたが今日まで大切にしてきた「まなざし」を、ちゃんと守れる場所を。

それが、きっと子どもたちの幸せにつながっていきます。


<参考>品川区 指導検査について
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kodomo/kodomo-hoyou/hpg000033487.html

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