子どもを預ける保護者にとって、そして保育の現場で働く保育士にとって、「安心」と「信頼」は何よりも大切な土台です。令和5年、大宮むさしの保育園において実施された監査で指摘されたのは、一見専門的で難しく思える「資金の清算」に関すること。しかし、その背後には、私たちが見落としがちな「保育の原点」が浮かび上がっていました。今回はその背景を丁寧に紐解きながら、保護者が保育園を選ぶとき、保育士が職場を選ぶときに大切にしたいことについて、やさしい視点で綴ります。
この記事でわかること
- 大宮むさしの保育園の監査で指摘された内容とその意味
- 公的資金と保育の信頼の関係
- 保護者として保育園を選ぶ際のチェックポイント
- 保育士として働く園を選ぶときに心にとめたい視点
- 子どもにとって「安心な保育」とは何か
1.「資金の清算」とは何か
監査の報告書に記されたのは、「各施設拠点区分への資金の貸付(借入)については、当該年度内に清算してください」という指摘でした。
簡単にいえば、同じ法人内で複数の保育園を運営している場合に、ある園から別の園へお金を貸すことがあります。これは法人全体として経営がうまく回るようにするための工夫の一つではありますが、その資金のやり取りは、年度をまたがないように「きちんと精算しておいてくださいね」という内容です。
なぜなら、保育園は公的なお金、つまり私たちの税金をもとに運営されています。そのため、お金の動きが明確であることが、地域の信頼を得るためにも必要不可欠なのです。
2.なぜ問題になったのか
このような資金の貸し借りが問題視されるのは、公的な助成金や保育料が「その園の子どものため」に使われているかどうかを明確にする必要があるからです。仮に、助成金が別の園の赤字を補填するために流用されたとすれば、それは本来の目的から逸脱してしまいます。
そして、この「目的を見失わない」ということは、保育の質とも深く関係しています。お金の問題は保育の現場に直接関係ないように見えるかもしれません。でも、運営が健全であればこそ、保育士が安心して働ける環境があり、子どもたちにも安定した関わりが提供できるのです。
3.保護者としての「見る目」
保育園を探すとき、どうしても立地や建物のきれいさ、雰囲気といった見える部分に目が行きます。それも大切な要素ですが、もう一歩踏み込んで、こんなことも意識してみてください。
- 園の運営法人はしっかりしているか
- ホームページで財務報告や事業報告が公開されているか
- 説明会や見学の場で、運営体制について質問したときの応答は丁寧か
透明性を大切にしている園は、保育の質にもきっと誠実です。
そして何より、園に入ったときの空気感。保育士さんの目線の温かさ、子どもの表情の伸びやかさ。こうしたことに、私たちはもっと正直でいてよいのだと思います。
4.保育士が働き先を選ぶときに
転職活動中の保育士さんにとって、職場の条件はとても重要です。給与や福利厚生、休みの取りやすさ。もちろんそれらは大切ですが、次のような視点も持ってみてください。
- 園が自立的な運営をしているか
- 経営層と現場の距離感に無理がないか
- 現場の声がきちんと届くしくみがあるか
- 複数園を抱える法人であれば、資金の使い方や方針が一貫しているか
「働きやすさ」は目に見えにくいものですが、透明な運営と穏やかな関係性がある園は、長く続けられる場所になるはずです。
5.保育の信頼は、日々の積み重ね
今回の指摘は、保育そのものに対して直接の否定をするものではありません。しかし、財務的な透明性は、保育という営みを支える根っこです。
保育士さんが安心して働ける環境があり、保護者が心から信頼して子どもを託すことができる──そんな園づくりのためには、見えない部分にも光を当てることが必要です。
まとめ
私たちが子どもを預ける場所、働く場所を選ぶとき、「目に見える安心」だけでなく、「目に見えない誠実さ」も見つめていきたい。今回の監査は、そのことを静かに教えてくれているように思います。
保護者の方々へ。日々がんばって働き、子育てをしながら保育園を探すのは本当に大変なこと。でも、だからこそ「信じられる場所」を見つけることが、子どもにとってもあなたにとっても、心強い支えになります。
保育士のみなさんへ。多忙ななかでの転職活動、本当におつかれさまです。どうかご自身の大切な時間と情熱を注げる場所を、ゆっくりと、誠実に探してみてください。
保育とは、人生の最初の社会との出会いです。その出会いがあたたかく、透明で、誠実でありますように。
<参考>さいたま市 児童福祉施設等に係る一般指導監査の実施結果
https://www.city.saitama.lg.jp/003/001/009/p008438.html
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