朝、子どもを預けるときのあの一瞬。泣きじゃくる小さな背中に「大丈夫だよ」と笑顔を見せる。でも本当は、大丈夫であることを願う気持ちで胸がいっぱいになる。
保育とは、目に見えるやさしさだけではなく、見えない細やかな配慮に支えられています。
今回は、調布市の保育園で指摘された「調乳時の検便未実施」という事例から、保育における見えない努力の大切さ、そして保護者・保育士が安心して園を選ぶために知っておきたいことを、一緒に考えていきたいと思います。
この記事でわかること
- 指摘内容「調乳担当者の検便未実施」の背景とその意味
- 調乳と衛生管理がなぜ重要なのか
- 保護者が園を選ぶときに注目すべきポイント
- 転職を考える保育士が見るべき園の体質とは
- 子どもたちの健やかな日常を守るためにできること
一、見過ごされがちな「調乳」の衛生管理
保育園では、0歳児や1歳児など、まだ母乳やミルクを必要とする子どもたちに対して「調乳」という行為が日々行われています。
粉ミルクを適切な温度で溶かし、赤ちゃんにとって安心できる状態で与える――この何気ない作業の裏には、細やかな配慮と知識、そしてルールがあります。
そのひとつが、「調乳担当者の検便」。
なぜ検便が必要かと言えば、調乳を行う保育士や職員がもしもノロウイルスやサルモネラ菌といった感染症の保菌者だった場合、ミルクを通して乳児へ感染する危険があるからです。
感染症はときに乳児にとって命にかかわる問題になります。だからこそ、衛生管理は絶対に怠ってはならないのです。
二、なぜ未実施だったのか――背景を考える
令和5年11月15日に実施された指導監査において、「ちいはぐ・飛田給」では調乳担当者に対する検便が適切に行われていないという指摘がなされました。
こうした指摘の背景には、現場の多忙さ、人員配置の逼迫、あるいは「検便の必要性」に対する意識の希薄さがあったのかもしれません。
日々、目の前の子どもたちへの対応に追われるなかで、”見えない仕事”である検便が後回しになることもあります。
ですが、それはやはり「当たり前に守られるべき安全」が守られなかった、ということ。
だからこそ今、こうした事実に目を向け、私たち保護者や保育に関わる大人たちが「気づく」ことが大切なのです。
三、保育園を選ぶとき、どこを見れば安心か?
保護者の視点に立ったとき、園選びは情報が少ないぶん不安も多いもの。
では、どこに注目すればいいのでしょうか?
以下のような視点を持つことをおすすめします。
- 衛生管理に関する説明が丁寧かどうか
- 保育士やスタッフの体調管理の体制(定期的な健康診断や検便の実施)
- 保護者とのコミュニケーションが密か
- 園だよりやお知らせに透明性があるか
- 食事やミルクに関するマニュアルが整備されているか
直接「検便は実施していますか?」と聞くのは勇気がいるかもしれませんが、見学時の雰囲気や職員の言葉から、「日々を丁寧に生きているか」はきっと伝わるはずです。
四、保育士が園を選ぶときに見ておきたいポイント
いま、転職を考えている保育士さんへ。
園の求人票や面接だけでは見えにくい「体質」をどう見極めるか。
それは、次のような視点を持つことから始まります。
- 衛生や安全に対する意識が高いか(研修の有無)
- 定期的な内部チェック体制があるか(自己評価や第三者評価)
- 「報告・連絡・相談」がしやすい空気があるか
- 職員間のコミュニケーションに温かさがあるか
- 子どもたちへのまなざしに余裕があるか
保育という仕事は「命を預かる仕事」です。
だからこそ、日々の忙しさのなかでも「当たり前のことが当たり前に行われているか」を見つめることが、よりよい職場選びにつながります。
五、頑張っている人を、応援したい
最後に、私はこう思います。
この指摘を受けた園も、きっと子どもたちの笑顔のために日々奔走しているのでしょう。
すべてを完璧に行うのは難しい。けれど、指摘を受けたことをきっかけに見直し、よりよい環境を作っていくことはできる。
保護者も、保育士も、そして保育園そのものも、ひとつのコミュニティとして子どもたちを支える仲間です。
小さな命のそばに立つ全ての人が、その存在を認め合い、応援し合える社会であってほしい――そんな願いを込めて。
まとめ
「調乳担当者の検便未実施」という小さな指摘から見えてくる、大きな問い。
私たちはどんな園で、どんな人に子どもを託すのか。
そして、どんな現場で、自分の力を活かしたいのか。
見えないところにある”やさしさ”と”まなざし”を信じて、保育に関わるすべての人たちが、今日も誇りを持って歩んでいけるように――。
そんな気持ちで、この記事を終えたいと思います。
<参考>調布市 特定教育・保育施設の指導検査
https://www.city.chofu.lg.jp/050010/p027027.html
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