私たちの暮らしの中で、子どもを預ける保育園は、まるで「もうひとつの家」のような場所です。忙しい毎日を生きる親たちにとって、安心して子どもを託せることは、何よりも大切なこと。
このブログでは、さいたま市西区にある「野の花すみれ保育園」での指導監査の事例をきっかけに、保育における「複数配置」の意味と、それがなぜ必要とされているのかを、ていねいに紐解いていきます。
保護者として、保育士として、あるいは社会の一員として――大切な視点をそっと手渡せたらと思います。
この記事でわかること
- なぜ保育の時間帯に「複数の保育士」が必要なのか
- 指摘事項が生じた背景と、本来あるべき保育体制
- 保育園を選ぶとき、保護者が見るべきポイント
- 転職を考える保育士が意識すべき「園の風景」
- 保育に関わるすべての人へ、励ましのメッセージ
朝の光と、子どもたちのまなざし
保育園の朝は、早い時間から始まります。まだ眠たそうな目をこすりながら登園してくる子どもたちを、温かく迎える先生の姿――それは何気ないけれど、心にしみる日常のひとこまです。
そんな朝の保育時間において、重要とされているのが「複数保育士配置」という考え方です。たとえ登園してくる子どもの数が少なくても、常に二人以上の保育士が見守っていること。それは、事故を防ぎ、安全を確保するためだけでなく、子ども一人ひとりと向き合う“ゆとり”を生むためでもあるのです。
ところが、さいたま市の「野の花すみれ保育園」では、2023年12月7日の監査において、「複数の保育士が配置されていない時間帯がある」と指摘されました。
どうしてそんなことが起きたのか
園で起きることの多くは、「人手不足」や「人員配置の難しさ」に根ざしています。特に昨今の保育業界では、慢性的な保育士不足が続いています。人を確保したくてもできない、急な退職や休職が出たときに代わりがいない――そんな現実が多くの園に共通しています。
一方で、保育士たちもまた、献身的に毎日を頑張っています。自分の休憩時間を削ってでも、子どもたちのそばにいたいと思う。それほどまでに、保育という仕事は「人」が支えているのです。
ただ、いかに想いがあっても、ルールはルールです。「保育士が1人きりになる時間をつくらない」ことは、法的な基準であると同時に、子どもにとっても、働く保育士にとっても必要なこと。今回の指摘は、園にとって“気づき”の機会であり、より良い保育へと進むための大切な一歩だったのかもしれません。
保護者の方へ――園選びで見るべき「静かな視点」
これから保育園を探す保護者の方へ、ひとつだけ大切にしてほしい視点があります。
それは、「保育士が余裕を持って働けているか」を見極めることです。
・朝の登園時間、複数の先生が笑顔で迎えてくれるか
・一人の先生が多くの子を同時に見ていないか
・何か起きたとき、すぐにもう一人の先生が駆けつけられる体制か
保育は人と人の関係です。そして、その関係性の中で子どもたちは育っていきます。だからこそ、「先生たちが無理なく働けていること」は、間接的に子どもたちの安心につながるのです。
保育士のみなさんへ――園を選ぶときに思い出してほしいこと
いま転職活動をしている保育士さん、これから保育士として働き始める方へ。
ぜひ、園を見学するときにはこう問いかけてみてください。
・「もし自分が急に体調を崩したら、代わりに入ってくれる人がいるだろうか?」
・「ひとりで任される時間が長くないだろうか?」
・「この園では、保育の相談がしやすいだろうか?」
園の体制は、あなたを守るシステムでもあります。働きやすさは、保育の質を保つための土台。無理を強いられる環境で笑顔を保つことは、誰にもできません。
だからこそ、自分自身を大切にできる場所を選んでください。それは、子どもたちにとっても幸せな選択になるのです。
誰かのために、そっと手を差し伸べる仕事
保育とは、子どもを見守ることだけではありません。保護者を支え、家庭を支え、そして社会の未来を支える営みでもあります。
けれど、支えるというのは、時にとても静かで、誰にも気づかれない仕事でもあります。
朝の登園に泣いてしまう子どもを、やさしく抱きしめること。お迎えの時間に保護者の表情を見て、疲れを感じ取ること。
その一つひとつが、「人として生きる」大切な営みです。
まとめ
保育園において「複数の保育士が配置されていること」は、安全のためだけでなく、「より良い保育」のために必要不可欠な条件です。
今回の指摘事項を通して見えてきたのは、ただの規則違反ではなく、「余裕のある保育体制の必要性」でした。
保護者も、保育士も、誰かの人生の一部を背負いながら、今日も頑張っています。だからこそ、「安心して預けられる場所」「安心して働ける場所」を、みんなで守っていくことが、今求められているのだと思います。
忙しい毎日のなかで、ふと立ち止まり、「この園は、子どもたちにとって、保育士にとって、やさしい場所だろうか」と問い直してみる――
そんな視点を、この記事がそっと届けられたらうれしいです。
<参考>さいたま市 児童福祉施設等に係る一般指導監査の実施結果
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