保育園を選ぶとき、私たちは何を大切にすればいいのでしょう。
子どもを安心して預けたいという思いと、働く保育士の誇りと責任。
その両方が交差する保育の現場では、小さなミスが大きな気づきになることがあります。
世田谷区のナオミ保育園での監査指摘を受けて、今回、保育をめぐる一つの出来事を丁寧に見つめ直したいと思います。
それは決して「失敗を責める」ためではなく、保育という営みの尊さと繊細さをあらためて知るために。
そして、保育園選びに悩む保護者や、転職を考える保育士の皆さんへの小さなヒントになれば嬉しいです。
この記事でわかること
- ナオミ保育園の指摘事項の内容と背景
- 本来あるべき衛生管理と保育園の役割
- 保育士が大切にしたい「安心」のつくりかた
- 保護者が保育園を選ぶときに見るべきポイント
- 転職を考える保育士に向けた園選びの視点
■ 「たまたま」では済まされない、でも「責めること」でもない
2024年10月22日、世田谷区によるナオミ保育園の指導監査において、こんな指摘がありました。
調理担当者の検便結果を事前に確認しないまま、業務に従事させた月があった。
この文章だけを読むと、冷たく厳しい印象を受けるかもしれません。
でも私は、このような指摘の向こうにある現場の状況や保育士の心の声に、そっと耳を傾けたいのです。
なぜ、このようなことが起きたのか。
背景には、慢性的な人手不足や、日々の業務の多忙さがあったのかもしれません。
検便の確認は、食中毒予防のために欠かせない大切な手続きです。けれど、確認のタイミングを逃すこともある。
毎日、子どもたちの食事をつくりながら、片づけや翌日の仕込み、書類管理までこなす調理担当者。
園全体でその確認体制がどうなっていたのか。
おそらく「忙しさの中で、誰かがやってくれていると思った」のではないかと、私は想像します。
これは決して擁護ではありません。
でも、現場にいる人を責める前に、構造としての課題や仕組みを見直すことが大切なのだと、私は思うのです。
■ 本来あるべき保育園の衛生管理とは
衛生管理は、保育の信頼を支える「見えない柱」のようなものです。
特に食事に関わる調理業務では、検便の提出とその結果確認は必須です。
ノロウイルスやO-157など、保育園では重篤化しやすい感染症を未然に防ぐために、検査結果の確認を怠ることはできません。
園としては、以下のような体制を整えるべきでした。
- 検便の提出と結果を一覧管理する帳票をつくる
- 確認責任者を明確にして、複数人でのチェック体制をとる
- 「確認漏れがないか」の週次レビューを実施する
- 業務の属人化を防ぐため、マニュアルを整備しておく
こうした当たり前のように見える仕組みを、忙しさに流されず、日々続けること。
それは「命を預かる」という保育の根幹に通じる責任です。
でも、それが難しいほど現場が疲れているのだとしたら──
やはり、働く環境を見直すことも必要です。
■ 子どもを預けるとき、保護者としてできること
保育園選びは、情報と感覚の両方が大切です。
情報としては、自治体の監査結果を見ておくことも有効です。
世田谷区では、公式ホームページで過去の指導監査結果を公開しています。
気になる園があれば、以下のようなポイントで確認してみましょう。
- 食事やおやつの提供体制は?(自園調理/外注など)
- 衛生管理はどうされているか(保護者からも質問してOK)
- 保育士さんの雰囲気は穏やかか(見学時の印象を大切に)
- 園長や職員の言葉に「子ども第一」の想いがあるか
何より大切なのは、子どもが安心して過ごせる「空気」があるかどうか。
それは目に見えないけれど、ちゃんと伝わってくるものです。
■ 転職を考える保育士さんへ──園を選ぶときの視点
あなたが保育士として、転職を考えているなら、ぜひこの視点を持ってください。
- 「人が辞めていないか」は大きな指標
- 衛生管理や安全体制がしっかりしているか
- チームとして保育をしているか(一人に責任を負わせすぎていないか)
- 定例ミーティングがあり、話し合いの文化があるか
- 自分の意見を言える空気があるか
保育の現場は、人で成り立っています。
そして、子どもにとっての安心は、保育士の安心から生まれます。
あなたが無理なく働ける環境を選ぶことは、保育の質を上げることにもつながります。
■ 応援したい、すべての保育と子育ての現場にいる人たちを
今回の指摘事項は、小さなミスかもしれません。
でも、その中にある「教訓」は、私たちにとって大きなものです。
- 子どもを守るために何ができるか
- 大人が安心して働ける環境とは何か
- 「誰か任せ」にしない仕組みづくりの大切さ
それを知ったとき、保護者として、保育士として、少しずつでもできることが見えてきます。
日々の子育てや保育の現場には、言葉にならないほどの努力と愛情があります。
その一つひとつを、私は心から尊敬し、応援しています。
まとめ
保育は、社会の未来を支える尊い仕事です。
小さな指摘の中にある「学び」を活かしながら、保護者も保育士も、よりよい選択をしていけたら。
一緒に笑い、泣き、育っていく日々。
その中で、誰もが「ここにいてよかった」と思えるように。
そんな保育を、これからも大切にしていきたいですね。
<参考>世田谷区 指導検査について
https://www.city.setagaya.lg.jp/01044/1632.html#p4
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