保育園という場所は、子どもが初めて社会と出会う大切な場所です。そこに通わせる保護者にとっても、働く保育士にとっても、安心と信頼がなにより求められます。世田谷区で行われたある保育園の指導監査に、ひとつの指摘がありました。それは「会計書類が適正に作成されていなかった」ということ。数字の話のようでいて、実は保育の在り方そのものにつながる深いテーマです。この記事では、その背景と本来あるべき保育の姿を、やさしくひも解いていきます。そして、保護者が保育園を選ぶとき、保育士が職場を選ぶときに大切にしたい視点についても、一緒に考えてみましょう。
この記事でわかること
- 令和6年11月20日に指摘された会計書類の問題とは何か
- その問題がなぜ起きたのか、背景をわかりやすく解説
- 「本来あるべき保育」とは何か、保護の視点から考える
- 保育園選びで保護者が大切にしたいこと
- 保育士が職場を選ぶときに見ておきたいポイント
- 子どもを真ん中に据えた、温かい保育を実現するために
会計書類の「不備」から見えること
保育園は、行政からの補助金を受けて運営されることが多く、園の経営状況を透明に保つために「会計基準」というルールがあります。これは、どんなお金をどんなふうに使ったかを記録し、整理するというものです。令和6年11月20日に行われた監査では、「キッズスマイル世田谷梅丘」においてこのルールにのっとった書類の作成がされていなかった、という指摘がありました。
このこと自体は、法律的には大きな問題ではないかもしれません。けれど、そこには見逃してはいけない小さな兆しが含まれています。
数字がずれているということは、保育の現場と運営の現場のあいだに、どこかで小さなほころびがあったということ。保育園が「保育をする場所」であると同時に、「小さな社会」であることを考えれば、書類の不備は信頼のゆらぎにもつながりかねません。
なぜ、そんなことが起きたのか
園の運営には、日々の保育だけでなく、事務や書類作成、予算管理といった裏方の仕事がたくさんあります。その中で、「本来やるべきこと」に手が回らなかったり、急速な人員交代があったりすると、会計処理が遅れたりミスが起きることがあります。
とくに民間が運営する保育園では、経営と現場のバランスを取るのが難しいこともあります。保育士さんたちは子どもと向き合い、親と向き合い、時間に追われながら全力で保育をしています。
そして、運営スタッフは、限られた予算の中で人を雇い、環境を整え、書類を整備します。そのどちらかが疲れていたり、情報が行き違っていたりすると、「適正な会計書類」はうまく作れなくなってしまうのです。
「本来すべき保育」とは何か
「保育」と聞くと、子どもと遊んだり、ごはんを食べさせたり、お昼寝をさせたり…という日常のイメージが浮かぶかもしれません。でも、保育の本質は「子どもを信じて、寄り添い、待つこと」にあるのだと思います。
その姿勢は、数字や時間、目に見える評価では測れないものです。保育士のまなざし、声かけ、関係性の築き方…そういった「小さなやさしさの積み重ね」が、子どもの心を育てていきます。
だからこそ、保育園の運営にもそのやさしさが必要です。帳簿に書かれる数字ひとつひとつが、子どもたちの笑顔や、保育士の働きやすさにつながっているという視点が求められます。
保護者が保育園を選ぶときに見たいこと
子どもを安心して預けられるかどうか。それは誰しもが一番に気にすることです。その安心感は、園の清潔さや雰囲気だけではなく、「職員が長く働いているか」「保護者との関係が開かれているか」などの視点で見ると、より深くわかります。
保護者会が定期的に開かれているか、運営に関する情報が開かれているか、園長先生がどんな思いで園を運営しているか。見学に行ったとき、園内の掲示物や保育士さんの表情にも、それは表れています。
「この園は、うちの子をひとりの人間として見てくれるだろうか?」
「ここで働く人たちは、安心して働けているだろうか?」
そう問いかけながら選んでいくことが、子どもにとって一番の選択につながります。
保育士が職場を選ぶときに意識したいこと
保育士の皆さんもまた、子どもと向き合う中で、自分の心をすり減らしてしまうことがあります。それは、やりがいを感じているからこそ。だからこそ、園を選ぶときには「自分自身が安心して働ける環境かどうか」を大切にしてほしいのです。
たとえば…
- 職員会議が形式的ではなく、意見を出し合える雰囲気があるか
- 書類業務が分担されていて、一人に偏っていないか
- 有給休暇や残業について、制度としてきちんと運用されているか
- 園長や主任との関係性が対話的であるか
こうした点を見ることで、自分が大切にされているかどうかが見えてきます。保育はチームで行うもの。だからこそ、「一緒に保育をつくっていける仲間がいるか」がとても大事です。
まとめ 〜すべては、子どものために〜
今回の監査指摘は、表面的には「書類の問題」かもしれません。でもその奥には、「信頼」や「運営の誠実さ」といった、目に見えない価値が問われているのだと思います。
保護者も、保育士も、みんな「子どもの笑顔を守りたい」という思いは同じ。だからこそ、その場となる保育園は、もっとも信頼される場所であるべきです。
「ここで子どもが育っていく姿を見たい」
「ここで一緒に子どもを育てたい」
そう思える場所に出会えるように。そして、そんな園がひとつでも増えるように。保育の世界に関わるすべての人の努力とまなざしに、心からの感謝を込めて。
<参考>世田谷区 指導検査について
https://www.city.setagaya.lg.jp/01044/1632.html#p4
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