保育園や認定こども園に対し、自治体が定期的に行う指導監査。指摘項目の中でも、睡眠チェックと並んで非常に多く、かつ重大な事件・事故のもとになっているのが「人員配置基準の違反」や「ワンオペ体制」です。
「朝夕の短時間だから」「子どもが少ない時間帯だから」といった理由で保育士1人で現場を回すような体制は、自治体から厳しく指弾されます。
なぜワンオペがこれほど問題視され、監査で繰り返し指摘されるのか。その危険性と、保護者が見抜くためのポイントを解説します。
この記事のまとめ
- 監査で多発する指摘: 「開園時や夕方に保育士が1名しかいない」「国の定める配置基準を満たしていない」などの違反が目立ちます。
- 「1人しかいない」状態の絶望的な危険さ: 万が一、子どもが急変したときや災害・不審者対応の際、1人では連絡も応急手当も不可能です。
- 監査結果を見るときのポイント: 「最低配置基準」「複数配置ルール」に関する指摘がないかを確認し、安全の基本が守られているかチェックしましょう。
1. なぜ「ワンオペ(人員不足)」の指摘が後を絶たないのか?
国のルール(児童福祉施設最低基準等)では、子どもたちの年齢に応じて「保育士1人あたりがみられる子どもの人数」が細かく定められています。また、「子どもの人数がどれだけ少なくなっても、常に2人以上の保育者を配置しなければならない」という複数配置の原則(※)があります。
※特定地域や時間帯の特例を除きますが、安全確保の基本原則です。
しかし、監査結果では次のような違反が数多く見つかります。
- 早朝・夕方のワンオペ: 登園・降園ピークを外れた時間帯に、保育士1人だけで複数の子どもをみさせている。
- 書類上のごまかし: 実際には現場にいない保育士(休憩中や別室で事務作業中)を「配置人数」にカウントしている。
背景には深刻な「保育士不足」や「人件費削減」がありますが、理由がどうであれルール違反は子どもの命を危険にさらします。
2. ワンオペ保育が「命に関わる事故」を引き起こす3つの理由

「少しの間くらいなら…」という油断が、取り返しのつかない事態を招きます。
① 「1人が倒れたり怪我を対応している間」に誰も見守れない
ワンオペ中に1人の赤ちゃんが吐いてしまったり、喉に詰まらせたりした場合、その手当をしている間、他の子どもたちは「完全に放置(放置状態)」になります。
② 緊急連絡・避難誘導が不可能になる
不審者の侵入、火災、あるいは子どもの重篤な体調変化が発生した際、ワンオペでは「応急手当をする人」と「119番に通報・誘導する人」の分担ができません。助かるはずの命が助からなくなる最大の要因です。
③ 疲弊による「確認漏れ」と「睡眠チェックの形骸化」
1人で複数の子どもに気を配り続けると、精神的・肉体的な限界に達します。結果として前回の記事で触れた「睡眠チェックのつけ忘れ」や「見落とし」、さらには見落としによる置き去り事故などの二次災害に直現します。
3. 自治体の監査結果を見るときに注意すべきポイント
自治体のホームページなどで指導監査結果(または改善勧告など)を確認する際は、以下のフレーズがないか注目してください。
【要チェック】ワンオペ・配置違反を示す監査のキーワード
□ 「職員配置基準の未充足」
□ 「2人配置(複数配置)の不徹底」
□ 「保育士資格を持たない者のみでの保育」
□ 「シフト表(勤務実績表)と実際の配置の差異」
特に「勤務表と実際の配置が異なっていた」という指摘は、監査のときだけ人数を合わせ、普段はワンオペを横行させていた可能性があるため注意が必要です。
おわりに:配置基準は「最低限の命綱」

保育士の配置基準は、「理想の保育を行うための数字」ではなく、「子どもたちの安全と生命をギリギリ守るための最低限の命綱」です。
監査結果で人員配置についての指摘を受けている園は、単に「人が足りなくて大変そう」なのではなく、「命を守る安全網が破れている状態」だと捉える必要があります。
保護者や地域の目が厳しくなることこそが、園の安全体制の改善と保育士の働く環境の健全化につながります。
