【静かなる問い】保育園という名の小さな社会――江戸川区・逆井保育園 指導監査から考える「子どもを託す場所」とは

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保育園とは何か。預けるとはどういうことか。

それは、ただ子どもを預ける場所を探すことではない。
親として、保育士として、人間として。
「生きる」を託し、「育つ」を見守る小さな共同体をどう選ぶのか。
令和6年10月17日、江戸川区逆井保育園で行われた指導監査結果を手に、
わたしは一冊の本を開くように、その現実と向き合った。

この記事でわかること

  • 逆井保育園で指摘された具体的な改善事項とその意味
  • 指摘事項の背景にある「本来あるべき保育」とは何か
  • 保護者として保育園を選ぶときに見極めたいポイント
  • 転職を考える保育士が見落としがちな「良い園の見つけ方」
  • 子育てと保育の現場に息づく、ひとりひとりの努力と光

第一章 静けさのなかにある「不備」の声

秋の深まりがようやく東京の空気を和らげた10月。江戸川区の逆井保育園に対して行われた定期の指導監査において、7つの重大な指摘事項が公表された。
それらは、事務的に見れば「改善勧告」であり、「行政上の是正要求」にすぎないかもしれない。しかし、よくよく読み解けば、そこには保育の根幹を揺るがしかねない静かな警鐘が鳴っている。

列挙された指摘事項は次の通りである。

  1. 第三者委員を設置していない
  2. 運営委員会を設置していない
  3. 健康診断の実施時期が適切でない
  4. 消防計画を届出していない
  5. 保育士を常時2名以上配置していない
  6. 乳幼児突然死症候群(SIDS)及び睡眠中の事故防止対策が不十分
  7. 前期末支払資金残高の取崩しが適正でない

一見して、専門用語が並ぶ。しかしその実、これはすべて「命と暮らし」に直結する問題だ。

第二章 保育園は、誰のためにあるのか

「第三者委員」とは、保護者や職員の声を客観的に受け止め、問題が起きたときに相談できる外部の見守り役である。
また、「運営委員会」は、園の運営方針や子どもたちの育ちについて保護者・職員・地域が意見を出し合い、よりよい保育をつくる場である。

これらがないということは――。
もし園で何か問題が起きても、外に声が出せない構造になっているということだ。

さらに、健康診断の時期が適切でないという指摘。これはつまり、子どもたちの体調や発育に対する管理が十分でなかった可能性がある。たった1ヶ月の遅れが、大きな見落としにつながることもある。

消防計画未提出は「防災意識の欠如」と言い換えられる。震災列島に暮らす我々が、最も優先すべきことのひとつではないか。

そして、保育士の常時2名以上の配置がなされていなかったという事実。これは「子どもを安全に保てる体制」が崩れていたことを意味する。

SIDSへの対策が不十分ということは、命を守る体制が弱かったということ。園で眠る赤ん坊たちにとって、それは致命的だ。

財務面の問題も、見過ごしてはならない。資金運用が不適切ということは、保育の継続性に不安があるということである。明日の保育が継続できるか――保護者にとって、これほど不安なことはない。

第三章 保護者ができる「保育園の見極め方」

保育園選びにおいて、華やかなイベントや外見だけでは、見抜けないことがある。
では、どうすればよいのか。

以下の3つを意識してほしい。

  1. 「組織の風通し」を見る
     運営委員会の有無、保護者が意見を出せる場があるか、情報開示の丁寧さを見る。
  2. 「安全への姿勢」を見る
     SIDS対策、避難訓練の実施状況、保育士の配置数など「命に関わる部分」には、現場の本気が現れる。
  3. 「園長の言葉に耳を傾ける」
     面談や見学の際、園長の語る「保育観」に注目を。理念にぶれがなく、職員との信頼関係が感じられるかどうか。

保育園は「小さな社会」であり、「暮らしの延長」だ。見学時の子どもたちの表情、保育士の目線、言葉の温度。そうした「温度のある空気」にこそ、真実が宿る。

第四章 転職を考える保育士へ――あなたが選ばれる前に、選ぶ力を

保育士の皆さんへ。
今、あなたが「働きやすい園」「理想の保育ができる場所」を求めているとしたら、その判断基準を「自分の心」でつくってほしい。

給与や休暇日数も大切だが、以下の点も見てほしい。

  • 現場での会話が敬意に満ちているか
  • 書類作成に追われていないか
  • 1日の流れが子ども主導で組まれているか
  • 事故やトラブル時の報告体制が確立しているか

保育士が安心して働ける園には、子どもたちも笑顔で過ごしている。
逆に、現場の疲弊が見える園には、子どもにも影がさす。

あなたの「理想の保育」は、必ずどこかにある。
「この子たちの未来を支える仕事をしている」という誇りを、どうか忘れないでほしい。


まとめ ――それでも、私たちは保育園を信じたい

保育園は完璧である必要はない。だが、「子どもを預かる覚悟」が、日々の営みの中に見える場所であってほしい。

逆井保育園の監査結果は、ひとつの園の問題にとどまらず、私たちが「何を託すか」「どこに託すか」という静かな問いを投げかけている。

親であるあなたへ。
保育士であるあなたへ。

どうか、自分の目で見て、耳で聞いて、心で感じて、園を選んでください。

そして、今日も子どもたちの笑顔のために奮闘するすべての人へ。
その努力は、誰かがきっと見ています。
その手のぬくもりは、未来にきっと届きます。


<参考>江戸川区 検査結果
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e047/kosodate/kosodate/kensa/kekka.html

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